2009年2月8日日曜日

アーツ&クラフツ

きょうは、東京都美術館で開催中の、『アーツ&クラフツ展』の記
念講演会で、二時間近い講演をしてきた。おかげさまで満席どころ
か何十人も溢れてしまって入場できない人が出る大盛況であった。
『私にとってのアーツ&クラフツ』という演題で、イギリスにおけ
るアーツ&クラフツ運動の概略と、日本の江戸時代における職人た
ちの工芸品、あるいは、光悦や琳派の工芸美術、そして日本版アー
ツ&クラフツ運動である民芸運動、さらには、ラファエル前派の芸
術と、ジャポニスムの関わり、あるいは、ハワードの田園都市構想
とアーツ&クラフツとの関連、などあらゆる視点から、この運動を
概観しながら、同時に、日常のなかにひっそりと存在している「親
しみ深いアーツ&クラフツ」という視点で、工芸品や景観、あるい
は書物の装訂などなど、42点ほどの映像を映写しつつ、お話してきた
のであった。写真は、その都美術館の前に建っている旧東京音楽学
校奏楽堂の佇まい。これも取り壊されるということになったのを、
作曲家の黛敏郎氏らが熱心に保存運動をしたおかげで、今日の姿
で、ここに移築保存されているのである。なんでも取り壊して建て
直すという、日本の体質はほんとうに芸術の敵といってもよい。こ
の奏楽堂では一昨年の六月、『バロック声楽曲の夕べ』という催し
があり、峯貞子先生のお勧めで、私も一曲、パスクイーニという人
の『静かなる憩いのうちに』というレチタティ−ヴォとアリアを独
唱したことがある。いや、その前にも、日本歌曲コンクールの作曲
部門で、櫻井順さんの作曲した『軽い機敏な子猫何疋いるか』とい
う歌を初演独唱したこともあった。とても歌いやすい良いホールである。