2021年9月30日木曜日

おおまさり


 じつは、信濃大町のスーパーで手に入れた珍しいものが、もう一つある。それはここもと写真にてお目にかける「おおまさり」という種類の落花生である。もっとも、そういう品種名では売られておらず、単に「茹でる落花生」という名前で売られていたので、ためしに買ってみたのであった。買ったときは、ふつうの落花生だと思っていたのだが、いざ東京に持ち帰って、添付の指示書きどおりに茹でてみると、これが「おおまさり」であることがわかった。
 この豆の大きなことは、スプーンの頭と比較してみると想像できるであろうか。ともかく普通の落花生の倍くらいある巨大な豆で、これは通常茹でて食べる品種である。しかし、栽培されている量は極めて少なく、また流通の時期もごく短期に限られるので、東京では、まず手に入らないし、買おうと思うととても高価である。しかし、これを信州のスーパーで買ったときには、別に高いものでもなく、350円とかそういう値段で、一袋たっぷり入っていた。なんだかお宝を掘り当てたような嬉しさがある。
 すこし濃いめの塩を入れた水で、水から茹でて40分ほど、あとは冷めるまで自然放置するというだけのことなのだが、それで殻のなかの豆にもしっくりと塩味がしみ込んで、またとない好風味となる。まことに嬉しいまぐれあたりであった。

2021年9月28日火曜日

しかく豆


  東京はなんでも手に入る町のようでいて、通常の住宅地のスーパーなどでは、肉も野菜も魚もごく限られた種類しか手に入らない。
 それが、信州あたりでは、東京では見かけない珍しい野菜などを、ごく当たり前に売っているので、じつに楽しい。前回の香茸などもその一例だが、今回は、スーパーで「四角豆」というものを買ってみた。
 ご覧のように、切ると断面が四角になっているので、このように呼ぶのであろうと思うが、みたところはとても豆のようには思えない。がしかし、まずはもっとも単純に茹でてお浸しにして食べてみた。ああああ、じつに美味しい。サクサクっとして、噛むとホロホロっとする。軽い甘みもあって、たしかに隠元豆のような風味もある。パッケージに天ぷらにすると美味しいと書いてあったが、目下のところ、天ぷらのような揚物は作らないということにしているので、それは残念ながらできなかったが、これをサクサクと切って炒め物にして、軽く醤油で味をつけたりしても、たしかに美味しそうだ。
 季節のある野菜のように思うけれど、次回信州に行ったら、またぜひ探して買ってみよう。そしてこんどは炒め物にしてみようか。これほど美味しい野菜がどうして東京に入荷しないのであろうかなあ。

2021年9月24日金曜日

香茸

 東京があまりにも暑いので、信濃大町の山荘にやってきた。すると、こちらはもう最高気温が22度くらい、夜は15度くらいにもなるので、ライトダウンを着ようかという冷涼さかげんで、まことにすごしやすい。
 安曇野は今や稲刈りの真っ盛りで、そこらじゅうで稲刈り機が動いている。いまどきは、もう手刈りしてはさ掛けにしようなんて人は殆ど居ないので、それはもう昔語りになった。
 秋はまた、秋野菜や茸などの最盛期で、今日ふと地元の農家の直売所に立ち寄ってみたら、正真正銘地元産のマツタケを、東京の半額どころか、五分の一くらいの値段で売っていた。それでも充分高価なので、買いはしなかったが。
 そのマツタケの横に、珍しい巨大な茸を山のように売っていた。これはなんだろうと思ってオバチャンに聞いてみたら、「香茸(こうたけ)」という茸だと教えられた。なんでも炊き込みご飯にしたり、甘辛く煮付たりして食べると、独特の芳香があっておいしいというのであった。写真のように巨大なやつが四株くらい一山で1パック2000円だというので、早速買ってきた。もっともこの茸は出るところへ出ると、この五倍くらいする、マツタケなみの高価なものらしい。
 さて、食べる前に、念のためにこの茸の性質について調査してみると、どうやら無毒ということではないらしく、生のままたべると、喉がイガイガしたり、たくさんたべると吐き気を催したりする毒が含まれているという。これを抜くには天日に干して、からから真っ黒になったやつを水で戻して、茹でこぼしたりしてから使うと安全だということである。なかなか面倒である。食べたいけれど、吐き気は困るので、明日から天日に乾し上げることにした。なので、どんな味だかは今のところ分らない。
 この茸は、ご覧のように、茶色くて鹿の子まだらになってるので、別名「鹿茸(ししたけ)」とも言う。ところがそう書くと「鹿茸(ろくじょう)」という漢方薬と同じ字なので混同されやすいが、このロクジョウのほうは、鹿の袋角の剥落したものを乾燥させたもので、まったく別物である。『徒然草』に出てくるのは、このロクジョウのほうで、シシタケのほうではない。念のため。

付言、その後、大町の古いマーケットにもこれを売っていたので、そこのご主人に、どうやって食べるのがふつうかを聞いた。すると、「なーに、こりゃ泥やなんかを落として、それから一回茹でこぼすと、黒い水が出るでね、それを捨ててから使やぁ、別に問題はないで。ま、いちばんふつうには炊込みご飯だな。もっとも、一番簡単で美味いのは、洗ってから、まるまんま炭火で焼いて喰やあ、そりゃもうご町内じゅうにこの良い香りが漂ってせ、それを喰いたさに、そと歩いてる人がぞろぞろ入ってくるってぐれぇさね。まあ、毒ってほどのものじゃなしに、アクがあるから、それを茹でて抜くってこったね。なんでも関西のほうじゃ、これを真っ黒に乾し上げたのを、二本、桐の箱に収めて、結納んときゃ必ず贈るってね。このへんじゃそんなことはしないけどさ」と、子細に教えてくれた。なーんだ、そんなに恐れることはないらしい。ただ、沢山喰うと、とかく茸類は腹を下すから、注意して食べるといいということであった。さて、どうするか、乾し上げるか、このままちょっとだけ味見をするか。ふ〜〜〜〜む。


2021年9月2日木曜日

名果「とよみつひめ」



 昨日、九月一日から、東京は俄かに気温が急降下して、非常に過ごしやすい涼しさになった。涼しいというよりは、もう肌寒い。それもそのはず、今日の最高気温は21度だそうである。一昨日は35度もあったことを思うと、その急激な温度低下にびっくりする。
さるところ、きょう、行橋市のYさんという友人から、おもいがけず素晴らしい無花果を頂戴した。行橋あたりは無花果が名産だということであるが、これが、新しい品種で「とよみつひめ」というのだそうだ。名前も床しいが、さて開梱してみると、あっとびっくり、こんなに大きくて、むっちりと充実して重く、しかも赤黒くなるほどに熟しているのに、ぜんぜん崩れていない。うーむ、これはうまそうだ、と、無花果が無双無二の好物である私は、ただちかぶりつき、たちどころに二個食ってしまった。いやああああああ、なんという素晴らしい無花果だろう。およそ無花果として考え得る最高の糖度、甘い! 甘いだけでなくて、みずみずしくて、しかも味もまた崩れたところが皆無だ。すっくりと立った味わいとでもいうか。
 いやじつに見事な逸品。すっかり脱帽。ありがとうございます。