2013年2月16日土曜日

とんだ災難

さてと、きょうは鎌倉の電通研修所へ古典文学の話をしに行ってきたのだが、その途次、とんだ災難に見舞われてしまった。右折禁止違反で取っ捕まってしまったのである。
午前中の講義なので、私は前夜鎌倉プリンスホテルに投宿して、午前九時半ころにホテルを出、研修所に向かったのだが、そこに行くためには、滑川の交差点で左折し、つづいて下馬の交差点で右折していかなくてならない。ところが、この下馬の交差点に差しかかったとき、私は、はたと困った。この標識の意味するところが実に分かりにくいからである。写真をクリックしてよくよくごろうじろ。たしかに、左の標識の補助表示の1番下のあたりに、ごく小さなごちゃごちゃした字で、「大型等以外の車両/終日」と書いてある。しかし、その上には大きな字で「大型等9-16/18-翌(?)7」、また右側の右折左折禁止の看板の下には「大型等7-9/16-18」と書いてある。さて、こんなごたごたと頭悪く書いてある標識を一瞬にして読み取って、はたしてここは右折していいのか悪いのか判断するのは、相当に困難である。私はここは大型車右折禁止、それも時間によっては大型は左折も禁止、という意味だと思ったのだ。事実大型や貨物だけが右折禁止という交差点もこういう調子の表示になっていることが多い。よくよく考えれば、それはたしかに、「大型等以外の車両/終日」と書いてあるから、普通車は終日右折禁止なのだと、まあ交差点内に停車でもして二、三分睨んでみれば分かるであろう。しかし、ことは交差点を沢山の車が通過する流れの中で、一瞬で判断しなくてはならないのだ。私は、ひとしきり頭を絞って考えた揚げ句、もう九時過ぎているのでダイジョウブなのかと思ってスッと右折してしまったのであった。みよ、このグーグルのストリートビュー写真でも1台騙されて右折している車が写っている。きっと彼も捕まって罰金を絞り取られたであろう。
ともあれ、私は日ごろから安全運転、順法運転の鑑であると言われている、定評ある超優良運転者である。だから、この看板の意味を短い時間では読み取れなかったというのが正直なところで、決して敢て無視したわけではない。割り切れないというか、怒り心頭というか、じつに後味の悪い一日となった。

2013年2月10日日曜日

徳川眞弓さんとプーランクを

こうやって音楽と関わった暮しをしていると、つぎつぎと音楽の仕事が到来する。それは私にとって、なによりも嬉しく、また生き甲斐にもなる。
今回は、プーランクの『象のババール』というピアノと朗読が交互に斬り結びながら、音楽の絵本という趣向で進んでいく作品の、その朗読を担当することになった。ピアニストは、徳川眞弓さん。『ババール』は有名な絵本であるが、私はもともと児童文学や絵本にはほとんど全く興味がない人間なので、万事はこれから研究しようというところである。しかし、これは絵本とは切り離して、純粋に音楽として演奏するというつもりの朗読なので、いわば、一種の「うた」だと見なしている。いや、声楽的にベルカントで歌うときと同じ声帯の使い方をしないと、大会場での朗読などはうまくいかない。といっても、あのオペラ歌手のような不自然な日本語で読むつもりは毛頭ないので、ご安心いただきたい。じつは、このたびリリースになった『謹訳源氏物語』の朗読も、発声としてはベルカントであって、決して安易に地声で読んでいるわけではない。そういうことの延長線上に、この作品も研究的に参加してみようと思っているところである。おまけに、私も少々歌をも歌おうかということになっている。
写真は、ちょうどきのう、その第一回の打合せと合わせ練習などをしたので、練習を終えてから、府中の手打ちそばの「心蕎人さくら」で蕎麦を喫しているところである。左が今回ご一緒するピアニストの徳川眞弓さん。右は、その仕掛け人でディスク・クラシカの主宰者仙波知司プロデューサーである。
徳川さんの公式HPは次のとおり。

http://park8.wakwak.com/~toktok/


2013年2月8日金曜日

岡本和久君

昨夕、投資教育家の岡本和久君と久しぶりの会食を愉しんだ。といってもこれもまた仕事の一環で、岡本君が主宰している「インベストライフ」という雑誌に掲載する対談が主な目的であった。
岡本君のプロフィールは次のサイトに詳しい。

 http://www.i-owa.com/seminar/okamoto.html

さて、経済畑の岡本君と、文学畑の私とは、あまり接点がなさそうな感じがするかもしれないが、実は、はるかな昔、慶應義塾大学に在学中、私どもは同じクラブの仲間であった。それはクラシカル・ギター・クラブという、クラシックギターだけを演奏するというまじめなクラブで、私はその副代表を務めていた。岡本君は、ギターばかりの大合奏団の指揮者とソリストを兼ねていた、大変な音楽好きで、いまでもそのOB会の主要なメンバーでもある。
そんな関係で、若い頃からの古き良き知友なのだが、彼は日興証券から国際畑を歩き、今は独立し、個人を対象として、いかにしたら「品格ある投資」によるよりよき将来を築くかということを啓蒙する、IOウェルス、という会社を経営し、ひろくセミナーなどを開いている。そしてそういう品格ある投資が、結果として自分のためにもなり、また世のため人のためにもなるという、高いモラルに根ざした、美しい投資活動ということを一般の人たちに教育啓蒙しているのである。
人生観や、価値観、また社会的な意識など、私どもには共通の考え方が多く、経済畑に岡本君のような人がいてくれることは、この暗澹たる世の中の、せめてもの救いだと、私は考えている。
きのうも、人生のこと、命のこと、社会貢献のこと、教育のこと、おおいに談論風発して愉快な一夕であった。
ちなみに、目の前に置いてあるものは、人生におけるお金の使い方を教育または自覚するためのアメリカ製「豚の貯金箱」で、投入口、取り出し口、貯金槽、いずれも四つにわかれ、頭のほうから順に、SAVE, SPEND, DONATE, INVEST となっている(この貯金箱を岡本君の会社で輸入販売する由)。お金は、ただ貯金(SAVE)するだけでなく、有意義に使う(SPEND)することも大切、世のため人のために義捐(DONATE)することも大切だし、さらに将来を見据えて正しい投資(INVEST)をすることもなくてはならぬということを示している。大切なことは、投資というのは、ただ金もうけのために株や債券などを買ったり売ったりする「投機」とはまったく違う営為だということである。株は、社会のために良いことをする会社を見極め、その将来性をよく量って株を持ち(株を買うことで、その良い会社に助太刀をするというような心がけとでも言おうか)、目先の欲得で売ったりせずに何十年と長く持ち続ける、そういうものだと彼は教える。詳しくは岡本君の著書『賢い芸人が焼き肉屋を始める理由』(講談社α新書)などに就かれたい。

2013年2月4日月曜日

『謹訳源氏物語』第九巻+電子版第一巻


 すっかりご無沙汰で、更新も怠っておりましたことをおわびします。
一月は、十日にアメリカのヴァージニアから、娘一家が一時帰国して、拙宅の隣棟のほうに三週間滞在していたもので、なにもかもそれに引っぱられて疾風怒濤のような生活でした。その娘夫婦と三人のボーイズもアメリカへ帰り、やっと平安が訪れたところで、折しも、『謹訳源氏物語』の第九巻が刊行になりました。
宇治十帖の半ばあたりの、まさに話も佳境にさしかかろうかというところ、早蕨・宿木・東屋の三帖がこの巻に収められています。
本編とはまた一味も二味も違う、現代小説風の展開を見せる宇治十帖。ぜひともご購読をお願い申し上げます。

と同時に、このたび、電子ブックの第一巻もリリースになりました。下の写真がその電子版の表紙です。
これは、『謹訳』の電子本文と、私自身の朗読音声とがワンセットになって、しかもたいへんに買いやすい価格になっているので、お買い得ではないかと思います。この朗読版は、ネット上で有料ダウンロードできます。
具体的には、iPhone、iPad、iPodtouchで、Appstore を立ち上げ、そこで、『謹訳源氏物語』もしくは、単に『源氏』と入力して検索してください。すぐに出てきます。私の朗読音声に従って、本文が黒から青に変っていく、あのカラオケの歌詞のような方式になっています。訳者自身が思いを込めて朗読した音声・・・これは東京エフエム系の衛星放送ミュージックバード局から毎日放送されています・・・その音声を聞きながら本文を読んで行くのは、また別の楽しみがあります。訳者自身が全巻まったく一人で朗読していくというのは、今までにない試みであろうと思います。録音するのは大仕事ですが、そこをがんばってやってきました。ぜひお聞きください。
電子版は、紙本における最新刷のテキストデータに準拠しているため、初版初刷にあった誤脱などがすっかり修正してあります。その意味でもお買い得かもしれません。
かくて、さしも長かった『謹訳源氏物語』も、あと一巻を残すだけとなりました。終ってしまうのが惜しいような思いを抱きながら、ともかくなんとしても良い訳文を完成したいと、ただその一念でやっています。六月には全巻成就の予定ですが、さて・・・。ともかくがんばります。