2012年5月4日金曜日

いきいき源氏講座

五月になった。その一日に、雑誌『いきいき』の主催する連続講演会の第七回が催された。この講演会は、もっぱら源氏物語についての卑見を披瀝するもので、今回は、「胡蝶」の巻に見る、源氏物語のドラマ構築の手腕の素晴らしさについて、実際の原文を詳細に読みながら考えてみた。
「胡蝶」の巻は、「初音」に続くいわばワンセットのような巻なのだが、それほど注目を集める巻ではない。
しかしながら、初音・胡蝶と、源氏の絶頂期における大邸宅六条院のありさまを美しく絢爛と描きだしながら、その背後に進行していく源氏と玉蔓の葛藤という、なかなか深いところに筆を及ぼした傑作だと私は思う。そういうのっぴきならない深いテーマを、緩急自在な筆致で、ぐいぐいと読者を引っ張っていく式部の天才と手腕には、ほんとうに頭が下る。その見事な筆致を、跡付けてみなさんとともに味わってみたというわけである。
この講座は、毎回受講者はほとんどリピーターばかりで、しかも全員が女性、男は一人も聞きに来ない。どうしても男は古典文学などには興味がない傾向があるのである。とはいえ、受講者はとても熱心で、毎回たのしい一時である。