2019年10月28日月曜日

湯島の聖堂


 昨日の日曜日、10月27日の午後、湯島の聖堂へ講演に出向いた。湯島の聖堂は、いわゆる昌平坂学問所(昌平黌)であるが、現存の建物は、関東大震災後に鉄筋コンクリートで再建されたもので、昔の建物が残っているわけではない。
 しかし、周囲をぐるりと回る石垣などは、きっと往古のままに違いない。
 ここには、斯文会という組織があって、研究や広報活動を担っているが、きのうはその斯文会の招きで話に出掛けたのである。

 『私の師事した二人の儒者 ーー福島正義先生と阿部隆一先生』
 
 という話をしてきた。福島先生は私の高校時代の恩師で、漢文だけを教えておられた。
 熱血漢の快男児で、剣道の達人でもあり、稚気愛すべき国粋壮士でもあり、漢詩人でもあった。その先生に高校一年のときに漢文をお教え頂いたことは、私のその後の研究行路にそこばくの影響があったと思う。阿部隆一先生は、大学院以後、書誌学を一から仕込んでいただいた恩師であるが、おっかない、けれどもこれまた愛すべき先生であった。
 その阿部先生は昭和58年の一月に易簀され、同じ年の十月に福島先生は『日本上代文学と老荘思想』という大著を世に出された。が、福島先生がいつ亡くなられたのかは、いろいろ調べてみても分からなかった。福島先生のことは、私の自伝的小説『帰らぬ日遠い昔』に詳しく書いてある。ご一読下さるとありがたい。
 

2019年10月21日月曜日

補聴器デビュー



 かねて私は右の耳が難聴で、それはたぶん少年のころに右耳を大けがしたことがあって、その外傷性の後遺症で難聴になったのではないかと推量されているのだが、その上に年齢的な聞こえにくさも加味し、だんだんと左右の耳の音程の感覚にズレを生じても来たので、この際最先進的なハイテク補聴器を誂えることにした。
 そのハイテク補聴器は、デンマーク製のワイデックスというメーカーのもので、もう二十年ほど前にもスウェーデン製だったかの耳穴挿入式の補聴器を作ったときの感じから比べると、これが天地雲泥の違い・・・というか進歩なのに驚いた。以前のはやはり違和感があって、あまり使わぬうちに破棄してしまったのだが、Bloomという会社で誂えた今回のは、詳密な聴音検査に基づいて、そのデータをすべてデジタル化してこの補聴器のチップにインストールするのである。すると、聞こえない周波数のところを、適切に補正してくれるので、まことにクリアに聞こえて、しかも音程の齟齬をまったく感じなくなったのは、大正解であった。また長年止まるということのなかった耳鳴りも、これをつけていると数時間ではっきりと軽減する感じがし、また耳管開放の症状もほぼ感じなくなった。
 これほどの効果があるとは、技術の日進月歩に一驚を喫したというわけである。
 それで今はこの小さな耳掛け式のをつけて暮らしているが、歌はほんとうに歌いやすくなったし、上の写真でもわかるように、補聴器をしていることは、ほぼ誰にも分からない。ありがたい、ありがたいと、こういうマシンを作ってくれた技術者たちに感謝しているところである。

2019年10月16日水曜日

江戸時代の銀杏


 商売柄、古い書物を常に手にしているのだが、ここに掲げたのは、『正聲集』という唐詩のアンソロジーで荻生徂徠の編述にかかる一冊。それも、舘柳湾(たち・りゅうわん)という江戸中期から後期にかけて活躍した文人の旧蔵書である。おそらく、これは柳湾の自筆の写本であろうと思われる。
 そういう本をいじっていると、ときに、ごらんのように、茶色くなった古い銀杏の葉がはらっと落ちてくることがある。
 これは、ほぼ銀杏の葉に限られるのだが、どうも虫よけというような効果が想定されていたように思われる。いずれにしても、こういうものを発見すると、二百年あまり昔に、この本を書き写し、また愛読していた先人の存在がそこはかとなく感じられて、とても懐かしい思いがする。すると、この銀杏も、もしかすると・・・というかかなりの確率で・・・柳湾の手によってここに差し挟まれたものと想像されるので、なつかしさも一入である。

2019年10月4日金曜日

デュエット練習



 またまた、大変に更新をさぼっておりまして、申しわけありません。
 実は、わが『謹訳源氏物語』の改訂新修版文庫本(祥伝社文庫)の、第十巻につき、その改訂作業と、再校の仕事に追われており、ひたすら源氏と向かい合って、捩り鉢巻きであったため、とくにご報告するようなイベントもなく、今日に至りました。幸いに、無事、第十巻も校了とすることができて、やっと一息、肩の荷をおろしたところです。
   死にもせず源氏書き終えて秋の暮  宇虚人
 そこで、これより、11月27日、雑司が谷音楽堂にて開催の『望郷SONGS』のためのデュエット等の練習に力を注ぐべく、10月2日の午後、ひさしぶりに北山ドクターとピアニストの井谷佳代さんのご来臨を仰いで、拙宅地下音楽室にて練習をいたしました。
 北山ドクターは、毎度のことながら、絶好調にて、大いに朗々と歌い上げておられましたが、私自身は、どうも耳の調子が悪いせいで、なかなか声の調子も整わず、四苦八苦しながら試行錯誤しているというところです。
 ともあれしかし、練習も無事終わり、そのあとお楽しみの夕食のスナップであります。
 今回のリンボウシェフの手料理は、
  フレンチポークの赤ワイン煮込み、煮玉子添え
  黒胡椒風味粉吹芋
  人参のグラッセ
  ブロッコリーとカリフラワーのボイル   
   カボスマヨネーズのドリップ添え
  栗と椎茸の「秋の炊き込みご飯」
  「呑む出汁とガゴメ昆布」の吸い物
 という献立にて、四人で、すっかり食べ尽くしてしまいました。