2020年1月18日土曜日

謡曲独吟


 今年は、正月早々から忙しく、ゆっくりと新年を祝ういとまもなかった。
 既述のとおり、孫どもはみなアメリカに居て、正月といっても夫婦だけでささやかな祝いだったけれど、さるなかにも、一月六日には毎日新聞に頼まれた鷗外の文体についての小文の〆切りが来る、五日には、日本合唱指揮者協会の研修会での講演はある、というわけで、毎日大わらわのうちに松の内はさっさと終わり、引き続き筑摩書房から出す予定の新著の口述筆記はある、句会はある、JR東日本に頼まれた講演はあるで、毎日ばたばたと駆け回っているうちに、はや一月も半ばを過ぎてしまった。
 さるところ、必要あって昔の写真を捜していたら、まだ三十代の頃かと思しき能舞台での写真に逢着した。このころは、津村禮次郎師の膝下にあって熱心に能を学んでいたもので、これはいわゆる素人会で、独吟をしている写真である。梅若能楽堂での一コマ。この時代に蓄積した能のあれこれが、その後何冊も能についての本を書くための下地となった。ありがたいことである。

2020年1月9日木曜日

昼の月


 新春早々の一月五日に、日本合唱指揮者協会という団体に招かれて、今年最初の講演仕事をしてきた。
 『歌曲の詩を読む』という主題で、「城ケ島の雨」の、北原白秋の詩の解析と鑑賞というのが主な内容で、もう一つは、「七つの子」という野口雨情の詩をどう読むべきかということもすこし話した。
 会場は、新宿の京王プラザホテル42階であったが、講演が始まる前・・・3時半からという予定だったが、その前の総会が押せ押せになって、実際には、3時四十五分からの講演となった。その待ち時間に、ふと窓外をみると、すばらしい冬晴れで、その中天たかく昼の月が見えた。午後3時ころに月が見えるのは珍しいので、すぐに写真に撮ったが、肉眼でみるとけっこう大きな月なのに、写真にとると、こんなケシ粒みたいな白い点になってしまうのは不思議な気がする。つまりそれくらい、私どもの肉眼というのは、選択的に物を見ているのだということがわかる。上の写真をクリックして拡大表示すると、たしかに白く月が写っている。
 平和な一日であった。

2020年1月2日木曜日

謹賀新年


 まずは、明けましておめでとうございます。
 年々歳々、お正月の祝い膳も手抜きになってまいりましたが、それでも例年は、黒豆とか焼き魚とか、林家伝来の芋玉とか、そういうものは作っていたのですが、今年はついにすべてやめて、近所のスーパーで、1780円なりのお節セットというものを買うという手抜きの極みとなりました。なにしろ、大晦日も年が明けるまで、ずっと書斎仕事で息つく間もなく、お節どころではないというのが正直なところでした。
 それでも、最近のこういうのはなかなか良く出来ているなあと、変なところに感心。去年はネットで冷凍の二万円くらいのお節セットを取り寄せたのですが、それがいっこうにおいしくもなかったことを思うと、これで良いのではないかと納得。ただし、お雑煮などはちゃんと作りました。
 私は新年早々から、すぐに〆切りの来る頼まれ原稿やら、正月早々からの講演に備えての勉強やら、春に刊行の新著の著者校正やらに忙殺されていて、お祝いの気分などはまったくどこにもありません。いくらなんでも、そろそろのんびりと隠居的正月、と行きたいものでありますが、世の中はままなりません。
 ともあれ、本年もよろしくお付き合いの程、お願い申し上げます。