2011年4月30日土曜日

超長茄子

 野菜というものはまことに面白い。
 ここもとお目にかけるのは、ご覧のような超長茄子。これはたしか長崎あたりの産であったかと思うのだが、ともかく、長い! 写真の皿は二十センチ以上の差し渡しのある皿だから、おおかたこの茄子は五十センチほどもあるにちがいない。ああ、しまった、喰ってしまうまえに、ちゃんと長さを計測しておくのであった。
 で、この茄子は、オリーブ油で焼いて食べたのだが、味はまったく普通の茄子で、季節が早いせいもあって、アクはまったくなく、いささか甘さも感じられる上等美味なる茄子であった。こういう滅多と見かけることのない野菜を手に入れて、さあ、どんな味かなあと想像しつつ料理する、そこに一つの大きな楽しみがある。

2011年4月28日木曜日

いきいき


 一昨日26日の午後、神楽坂にちかい出版クラブというところで、雑誌いきいき主催の文学講演会をやってきた。これが三度目だが、前回に引き続き、源氏物語を主題に一時間半お話ししてきた。今回の題目は『光源氏のイケズぶり』というので、この物語のなかに描かれている光源氏がいかにイケズであるかということを、あれこれ例を引きつつ解剖した。
 まあ、そういうイケズな男であっても、天下無双の美男で、貴公子で、天才で、秀才で、美声で、優しげで、泣き虫で、と、こう条件が揃えばどうしても女心は引きつけられてしまうのであろうと、そのように結論づけざるを得ないのだが、聴衆は全員ご婦人で、なかに、敬愛する清川妙先生と、桐原春子さんのお姿もあった。桐原さんは、ずっと以前に雑誌の対談でお目にかかって以来、お互いの著書を交換するというようなおつきあいだが、すらりと背の高い、日本人離れした素敵な女性で、そのご生活自体が、一つの素晴らしい美を体現している方である。桐原さんのブログの美しい花々やお庭の風景の写真には、たしかに人を癒してくれる力がある。この写真はその桐原さんとのツーショットで、私が手に持っているのは、桐原邸のお庭の花々を摘んで作ってきてくださったブーケである。

2011年4月18日月曜日

たまには豪勢に

 というわけで、景気付けのつもりもあって、巨大なるインドマグロのカマのところを買ってきて、これをローストして喰った。
 この皿は三十センチくらいある大皿で、そこからもドンとはみ出るほど巨大なカマのロースト、これはちょっと料理に手間がかかった。
 くわしくは、「毎日が発見」という雑誌の連載「リンボウ先生の食いしん坊日乗」というところに書くけれど、まず、すっかり中まで火を通すには、一時間十五分くらいは焼かなくてはならぬ。とかくマグロは生臭いけれど、きちんと下処理をして手抜きせずに作れば、非常に美味しくもできる。いや、まことに結構なるお味でありましたが、実はこのマグロは、二キロほどもあって、たったの500円であった。みんなどうやって料理したらいいか分からないから買わないのであろうかな。

2011年4月15日金曜日

国立天文台の花


 ちょうど、小金井から中央高速調布インターへ行く途中に、旧国立天文台がある。今は独立法人になっているのだが、昔は、東大の研究所の一部であったという。その天文台の渡部潤一先生からお誘いいただいて、生まれて初めてこの天文台に足を踏み入れた。かねてから、美しい里山風のたたずまいを眺めては、どんなふうになってるのか、一度中を見てみたいと思っていたので、お花見を兼ねて見物に行ったのである。入ってみると、想像していたよりずっと広くて木々が素晴らしい樹形を形作り、盛大に竹やぶなどもあって、東京のなかにこれだけ豊かな自然があるのは珍しいと感心した。その広大な敷地のなかに、戦前からずっと続くさまざまな天体観測施設が散在し、不思議に歴史的な景観を見せている。
 折しも数多くの桜の古木が満開で、天気は良し、まことに絶好の花見となった。職員の方々、渡部夫妻もご一緒に、しばし花のもとの風流を楽しんできた。写真上の左が渡部先生、下は、敷地内に復元移築されている昔の一号官舎の庭に設置された小型天体望遠鏡で遙かに遙かに遠くの雑木林をのぞいてみた景色。これほど近々と若葉が見える。よい春の行楽であった。

2011年4月6日水曜日

神代桜


山梨県北杜市白州の山中にある山荘を、今年も開けに行ってきた。毎年忙しくてなかなか行かれないのだけれど、雑木林のなかのこのログハウスの山荘は、ほんとうに居心地のよい「私の好きな場所」である。今年は、少し源氏の本でも持って行って、山荘に籠って源氏を書こうかとおもってもいる。ただ、まだ山の中は寒くて、若葉の季節までもう少し待たなくてはならない。
ゆく道の途中に、山高神代桜という樹齢二千年という途方もない巨木古木の桜があって、特別天然記念物に指定されている。これを見に行ったが今年は春が寒くて、いまだに開花していなかった。残念。しょうがないので、B級グルメ富士宮焼きそばを屋台で食って引き返した。

2011年4月5日火曜日

坂口貴信君独立披露能

 ちょっと時間が経ってしまったけれど、三月の二十七日、観世流能楽師坂口貴信君が、宗家内弟子から独立したことを記念して、郷里の博多大濠能楽堂において、秘曲『石橋』を舞った。坂口君は、わが林望事務所番頭坂口翠君の実兄で、私の芸大時代の教え子でもある。そんな関係もあって、この独立能の解説をしに博多まで出向いてきた。この不穏な情勢のなかで、しかし、公演は満員の盛況で、大成功裡にめでたく舞納めた。『石橋』は、小書きつきの半能で演じられることがおおく、まったく何の小書きもない根源の姿で演じるのは、むしろ非常に珍しいと言って良い。昔は、一子相伝の秘曲だったそうであるが、こたびは、宗家直々に後見を務められての披きであった。まことに格調高く、また強づよとした舞ぶりで、獅子の舞の本義にかなうというべきものであった。これより、坂口君は、一人前の能楽師としてますます活躍の場を広げていくことと思うが、どうぞ皆さま御贔屓に願い上げ奉ります。写真の向って右が貴信君、左が翠君、両側に御両親。お父さまの信男師も博多在住の能楽師、貴信君はいわばサラブレッドである。良い演能の一日であった。大濠能楽堂のホワイエにて。