2009年8月28日金曜日

源氏物語と帰宅の時代

ながらく更新もせず、もうしわけなく存じます。じつはその後ずっ
と書斎に篭城して、この夏はほとんどどこにも出ず、ひたすらひた
すらに源氏物語の全訳に取り組んでおりました。おかげさまで、第
一巻の分として、桐壷から若紫までは脱稿して出版社に送り、いま
はひきつづきその先を書き進んでいます。さすがに手ごわい相手で
はありますが、これほどまた楽しい仕事もなく、源氏物語の素晴ら
しさ面白さに、日々心を遊ばせながら、こつこつと正攻法で進んで
います。私の現代語訳は、今までにない新しい文体で、しかし、ど
うやったら源氏の面白さを分かりやすく読みやすく、しかも学術的
に正確に解釈しながら進めるかという、チャレンジであると思って
います。作家である前に古典学者であるという私自身のアイデン
ティティに基づいて、女流作家の方々のそれとは明らかに一線を画
した、なるほどこういう現代語訳もあるのかとびっくりしていただ
こうと思いつつ、毎日毎日、精進潔斎、謹厳実直に源氏に向かい
合っています。十一月には第一巻が出ますので(祥伝社より刊行)
ぜひ御購読ください。
その前に、このほど、『帰宅の時代』が新潮文庫になりました。文
庫本の表紙は、私がみずから水彩で装画を描きました。あわせてご
覧いただけましたら幸いに存じます。