2015年9月5日土曜日
新秋の信濃路
夏じゅう平家物語と格闘していた信濃大町の山荘での生活も終え、昨日東京に戻ってきた。やはり信州から戻ってくると、東京の空気はどんよりとして蒸し暑く重い。
もう信州の野はすっかり秋の佇まいで、じつに美しくどこか寂しげであった。上の写真は、信濃大町から山道を辿って長野のほうに少し行った山中の村、美麻(みあさ)のそば畑である。いまは蕎麦の真っ白い花が盛りで、その清潔な美しさは比類がない(私は一面のラベンダー畑だの、芝桜の丘、なんてのにはまるっきり何も感じないのだが、こういう風景には非常に感銘を受ける)。以前は蕎麦も輸入ものが多かったかと思うが、近年は信濃はどこもここも蕎麦畑が増えた。おそらく蕎麦の自給率もかなり改善されたことと推量される。これには、地粉での手打ち蕎麦店が夥しく増えたことや、蕎麦を食べる人の口が肥えて来たことも与って力があるのであろう。この白い花から香り豊かな信濃の蕎麦ができる。秋は新蕎麦の季節でもある。
下の写真は、もう少し長野に近い山奥の鬼無里(きなさ)村の風景である。いままで鬼無里は音にのみ聞いて行ったことがなかったので、今回一人山道を運転して初めて見参。山奥だが、なかなか素敵なカフェなどもあって、よいところだった。その村の外れの道ばたでは、もうススキがさかんに穂を風に揺らせていた。ちょっと前までは、日本国中セイタカアワダチソウなんて外来植物が幅をきかせていたものだったが、最近はまた段々ともとのススキの野に回帰してきたような気がする。やはり秋はススキとアキアカネである。
清爽な空気が、はや秋冷という感じになりつつある信濃を後に、東京にもどって、はやくも信州を懐かしんでいるところである。