2019年6月24日月曜日

梅しごと


 ちょうど今ごろ、つまり梅雨の頃に、梅の実が熟する。
 私の家の庭には、良い実のなる梅の木が二本あって、ことしも無事たくさんの大きな実をつけた。そうして梅の雨が降る時分まで我慢して木で熟させ、それから取る。
 昔は、これで梅干しも漬けたし、梅酒も作った。梅酒に至っては、作ってもなにせ私がまったくの下戸でアルコールは受け付けない体質なので、自分で飲むことはない。ただ、漬けてから十年もすると、それはそれは豊潤な香りのトロリとした梅酒になるが、飲めないのはまことに残念。そこで近年は、これを甘煮にしたり、ジャムを作ったりすることにしたのである。
 自宅製の梅はほとんど農薬を使っていないから安心だし、砂糖の甘味も控えめにしているので、じつに爽やかな風味のそれができる。
 梅の実は植木屋に取ってもらって、まだ青いのも多いので、二三日そのまま室内に置いて黄色く熟すのを待つのである。さて熟すと素晴らしい香りがしてくるので、さあそうなったらジャムに煮時である。
 よくよく実を洗いながら、ナイフで皮と身を核(たね)から切り離してゆく。これがひとつの大仕事だ。そして、家中で一番大きな寸胴鍋をだして、そこに剥くそばから放り込む。こういう仕事を「梅しごと」というのだそうだが、私のところでは、梅しごとはいつも夫婦二人でせっせとやる。で、煮るのは私の専門事項だ。
 大量の砂糖、白ワイン、さらに黒胡椒とシナモンと少々の塩とを加えて火にかけ、あとはひたすら煮込むだけである。市販のにくらべると甘味はうんと控えめに作る。ジャムは美味しいから思うさまパンにのっけて食べたいが、あまり甘いとカロリーが高すぎて健康によくなさそうだから、これを控えめにしておくのである。
 煮詰めすぎると、まるで梅のフルーツらしい感じがなくなってしまうので、私はせいぜい三十分ほどしか煮込まない。それでまだいくらか水っぽいテクスチャーだという感じのうちに火を止めて、あとは耐熱ガラス瓶に煮立っているところを即座にいれて、電光石火で蓋をしめてしまうと、内部が熱消毒されてくさらない。
 煮ている間、こまめにアクを取ることも、ジャムを爽やかな風味に仕立てるためには必要である。 
 例年のとおり、とても美味しくできて、今朝からさっそく舌鼓を打っている。