2019年7月25日木曜日

久しぶり『梵』の普茶料理




 ずいぶん御無沙汰をしてしまっていたが、ひとつ暑気払いという心を以て、入谷の普茶料理『梵』まで、デトックス的御馳走を食べに行った。
 梵は、いつ行っても、悠々たる時間が流れているような不思議に落ち着いたしつらいで、その清潔で高雅な佇まいは、ゆっくりと会話を楽しみ、料理を味わうのに好適である。こういうお店はあまり類例がないような気がする。しかも、お料理はすこぶるリーズナブルな価格で、その手間ひまのかかった数多い品々を頂くについて、申し訳ないような気さえするのである。
 さて、この写真の一番上は、笋羹(しゅんかん)といい、普通の懐石ならば八寸というようなものにあたる。いわば豪華なオードブルである。この一つ一つに非常な手間がかかっている。家庭ではできない味である。真ん中の写真は、刺し身に当るもので、ただし普茶は精進料理だから、生臭ものは一切無い。で、若鮎に見立てた巻湯葉、これには蓼酢が添えてある、また白身魚の薄造りに準えた薄蒟蒻も涼しい。下の写真は、これぞ夏の一品というもので、鰻豆腐という。豆腐を主とした材料を合わせて、あたかも鰻の蒲焼きのように作った遊び心満点の一品であるが、じっさいちょっと鰻めいた味わいがある。この品は、『豆腐百珍』の続編にざっとした作り方が出ているが、それよりは、この梵の作り方のほうが手が込んでいる。味もきっとこちらのほうが本家を凌駕するにちがいない。
 というわけで、頗る満足の一夕でありました。