しかし、いざ蓋を開けてみれば、C505なんて巨大なスタジオに、スタインウエイのグランドピアノまで用意して、録音技師やら、何人ものADやらがついて、ととんでもないおおごとになってしまって、ややや、と思ったことであった。
けれども、やることになってしまったのだから、しかたない。覚悟を決めて、一回だけ柿沼さんと合わせ練習をして、あとはぶっつけ本番。曲目は滝廉太郎の『花』(これは石山さんにも参加してもらって三人で歌った。私は高音部を担当)と、私の訳詩による『アロハ・オエ』(こちらは、柿沼さんとのデュエット、こんどは低音部を担当した)やはりこれがそのまま生で全国に放送されると思うと、舞台とはちがった緊張感があった。ま、生まれて初めて放送で歌う、緊張するのもしかたない。しかし、まあまあ、なんとか歌い終えて、ホッとしているところである。ピアノ伴奏は、いつも伴奏してくれる、名手五味こずえ君。ああ、疲れた! 放送は舞台より疲れるかもしれない。