木曽の御嶽山が噴火をして大きな被害が出たことは、まことに心が痛むが、その御嶽も遠からぬ飯田へ4日に講演に行ってきた。
もしかして火山灰など降っていはせぬかと案じたが、風向きの加減か、この町にはとくに火山灰の被害などはないということであった。
講演は、源氏物語の世界を語るということで、予定の時間を若干オーバーして、二時間十分に亘って一生懸命話してきた。聴衆はとても熱心で、長い講演時間にもかかわらず、一心に耳を傾けてくださった。飯田は文学の盛んな土地柄らしく、もう長いこと続いている読書会の方々などがずいぶん聴きに来てくださったらしい。ありがたいことである。
講演に先立って、午前中に少し時間があったので、例によって車を駆って近在を見物して回った。そしたら、南原橋という高架橋にゆきあい、そこからは天竜峡が絵のように見事に見渡された。さっそく車を路傍に駐めて写真を撮りに歩いて戻ったが、いざ橋の真ん中まで行くと、そのあまりの高さに、高所恐怖症の著しい私はとても橋の欄干のところまでは近づくことができず、へっぴり腰になってすこし欄干から離れたところで写真を撮った。
なんでもこの辺りでは一番の高架橋で、年に何人も身投げをする人があるのだとか、後で聞いた。