2010年9月12日日曜日
耳で聴く源氏物語
きょうは、横浜の神奈川近代文学館のホールで、耳で聴く源氏物語、という朗読会をやってきた。源氏物語は、もともと宮廷のサロンを中心とした、小さな貴族の座で、女房たちが朗読して聴かせ、それをみなが聴聞するという形で享受されたものであった。それゆえ、この古式に倣って、原文も、また謹訳源氏物語も、朗読という形でセッションをして、それを聴衆にはもっぱら耳で聴いて味わって頂こうという趣向である。謹訳は私みずから朗読、いっぽうの原文の朗読者としては、俳人として大変ご高名な西村和子さんに特にお願いしてご出演願った。西村さんは、ご自身も『季語で読む源氏物語』という御著書をお持ちではあり、また、源氏物語を読む会も主宰しておられるほどで、源氏には頗る通暁しておられ、そもそも私と同じ慶応義塾の国文科のご卒業で、私より一年先輩に当たる。だから、ただ読むというだけでなくて、原文の味わいをよく心に刻みながら丁寧に読んでくださって、おかげで私も謹訳の朗読がたいへんやりやすかった。もっとも、全部で7セッションやったのだが、原文を先に読んでから謹訳を読む、謹訳を先に読んでから原文を読む、あるいは一節ごとに原文・謹訳と組み合わせて読む、あるいは、夕顔の死の場面などは一文ごとに原文・謹訳を斬り結んで緊迫感を味わっていただく、また、帚木や松風などは、原文は朗読せずにプリントして配布し、原文を目で追いながら私の謹訳朗読を耳に聞く、というやりかたを交えもした。そういうふうにいろいろな実験を試みながら、7セッション。全部で二時間の朗読会は、しかし、あっという間に過ぎてしまった。楽しかったので、これはぜひ、各地へ持って行って公演したいと、西村さんとこもごも語り合っているところである。