2011年7月24日日曜日

やぶがらし

 人は笑うかもしれないが、私はこの写真のヤブガラシというつる草を愛好することただならぬものがある。その「薮枯らし」を意味する和名からみても分かるように、非常に非常に繁殖力の強い多年性の草で(それゆえ、園芸家はこれを蛇蝎のごとく忌み嫌って見付け次第に抜き捨てるけれど、ああ、そういう人は美しいものを見る目がないのであろう)、しかも毎年春に新芽を出して、夏には喬木の天辺にいたるほどの壮絶ないきおいで伸びる。この堂々たる生命力は、葉にも花にも漲っていて、どんな日照りにもピンと背筋が伸びているので、見ているとこちらも元気になるほど、すばらしい躍動感を感じさせてくれる。園芸品種の脆弱な植物が、せいぜい水をやり、肥料を施し、殺虫剤を撒いてやらなくては生き残れないのとは正反対に、何もせず、何もやらず、しかしこの草は独立孤高、まことに市井の片隅に生きて行くことを応援してくれるような気がする。昔からこの草が繁茂すると他の草木が枯れて、いかにも貧乏臭い感じがするというので、ビンボウカズラなどという名で貶められたりもするが、とんでもないことである。わが愛するヤブガラシは、若芽若葉は茹でで食用になり、豊富な栄養をもつばかりか、その根は烏斂苺(ウレンボ)という名の漢方薬剤で、鎮痛解熱などの効果がある。しかもこの花のなんと造形的で美しいこと!まるで現代芸術のように、見れども飽かぬ色と形を持っている。この草を私は決して抜かせない。そうして夏になって我が庭のマテバシイやナツユキカズラの上に這い登ってきて、時を得顔に陽光に輝いているのを見ると、ああ嬉しいなあ、きれいだなあと思うのである。