2015年10月24日土曜日

日比谷カレッジ

一昨日、10月22日の木曜日、毎年恒例となっている、日比谷図書館と上広倫理財団の共催にかかるレクチャーシリーズの一環として、今年は『謹訳平家物語』をめぐってレクチャーをしている。先月は第一回として、平家物語とはなんだろうか、それを現代語に訳すということはどういうことか、という全体を通じての概論的な話をして、その第二回が一昨日の会であった。
 第二回は、翻訳家であり、詩人であり、版画家でもあるというピーター・マクミラン氏をゲストとしてお招きし、おなじく「訳す」ということながら、外国語の翻訳と、古典の現代語訳の異相と共通点などをめぐって話し合った。
 マクミラン氏は、『百人一首』の英訳で世界的に知られる気鋭の翻訳家、というか日本文学研究者であるが、現在はひきつづき『伊勢物語』の英訳に取り組んで、近日中にそれも世にでる運びとなっている由。
 流暢で高雅な日本語を駆使して、和歌におけるレトリックをどのように理解し、どのように英語で表現したら、英米人にもっとも正確に伝わるか、といって、もともとの歌の風韻を殺さぬように、詩人としてのセンスを活かして、あくまでも詩的に訳すには、どうしたらよいか、ということを、いくつかの例歌を俎上に上げて見事に論じられたのは大いに感服したところである。
 そのあと、聴衆には例の如く平家物語の原文(巻三「僧都死去」より)を配布しておいて、私は『謹訳』を朗読し、マクミラン氏はその英訳を、朗々と恰もシェークスピア劇のような韻律性をもって朗読された。これは大変におもしろい試みであったと自負するところである。
 終わってから、また二人して、わが愛してやまない早稲田の八幡鮨の暖簾をくぐり、大いに舌鼓を打った。写真は食後の一コマ。八幡鮨五代目安井栄一君と裕子夫人を交えて。