一昨日、28日に、新潟県立図書館の創立百周年記念イベントの一環として、同館での講演(源氏物語について話をした)をしてきた。
27日に関越道・北陸道をまっしぐらに通って新潟入りし、翌日は講演、そうしてもう一泊して、昨日越後路と上州路の秋を満喫しながら、ぶらりぶらりと逍遥しつつ戻ってきた。車の運転がなにより好きな私にとっては、こういうふうに仕事を終えたあと、ひとり気ままにドライブしてあるくのが、なによりの気晴らしなのである。
越後は、もうすっかり田も刈られて、冬じまいの佇まいであったが、あいにくと天気が悪くて空気がどこも霞んでいたのは、ちょっと残念に思った。
ところが、越後と上州の国境の長いトンネルを抜けると、そこは別世界で、からりと晴れた秋景色であった。
あちらのインター、こちらのインターと、しきりに高速から降りて、秋の田園を逍遥してきたが、なかでもこの写真は、月夜野インターで降りてから、当てずっぽうで走り回っているうちに、ふと遭遇した景色である。
良い景色というのは、「どこ」という特別なところでない、ふつうの道のほとりに見いだされることが多い。だから私は、観光地には行かないし、いわゆる「展望台」なんて場所にはまったく興味もない。
ちかくの山道には、「熊出没ご注意ください」という張り紙がそこら中に貼ってあって、うっかりしていると熊公に出くわさぬものでもない、と十分注意しながら、秋らしい空気の横溢するところで写真を撮った。
こういう山村の風景に出会う時、ああ、日本の秋は良いなあ、とつくづく感じるのである。