2016年10月9日日曜日

空心菜の花


 ながらくの御無沙汰、まことに恐縮でありますが、じつはこのところ非常にタイトなスケジュールに追われていました。
 その最大のものは、やはり『謹訳平家物語』の初校と再校という仕事です。
 校正といっても、この『謹訳平家』は、朗読テキストというのがコンセプトなので、ふつうの本のそれとは、ちょっとやりかたが違います。そもそも、原稿も第一次草稿を書き上げると、それを朗読しながら、推敲していきます。読んでみて、リズムの合わないところはないか、もっと美しい音律はないかと模索しながら、この推敲だけでも二日くらいかかります。
 こうして完成稿ができると、ベテランの校閲者の元に回し、そこでさまざまの問題点の指摘を受けて、これを初校のときに修正していきます。この初校のときにも、すべて朗読しながら、極力文章を洗練するべく努力します。そして再び校閲者に戻して再校が出ます。再校もまた、朗読しながらやっていくのです。草稿から再校を上げるまでに、なんども声に出して読んでみて「朗読テキスト」としてのブラッシュアップをしていくわけです。不思議なことに、黙読しているだけでは気付かない不具合に、朗読すると気付くことが多いのです。それだけテキストに集中するということなのでしょう。
 だからこの本は、黙読しないで、ぜひぜひ朗々と音読してほしいと思っています。
 ともあれ、『謹訳平家物語』は、全四巻、ついに完結し、まもなく印刷にとりかかります。十一月下旬までには刊行になると思います。
 やっと少しだけ時間ができたので、また信濃大町の家に来ています。まだ少し早いのですが、いくらか紅葉が始まっています。今日、金沢から北山ドクターも来村して、また二人で歌の稽古に励みます。
 そこで昨日、大町のスーパーで買ってきた地元野菜の空心菜を、今朝の朝食で食べようと思ったら、なんと、ピンク色の可憐な花がついていました。かわいいので写真にとりましたが、食べてみたら、茎のところは固くて歯が立ちませんでした。花が咲くようになっては、つまり「薹が立ってる」ということなんですね。