2018年4月26日木曜日
擂り流し
由来金沢は大藩の城下町ゆえ、文化的に水準の高い町である。したがって、お料理などもまことに格調高く、往古より伝承されている上つ方の料理流儀である四条流の名人なども、この町にはいる。そして、日本海の海の幸、美味しい米を始めとして、山海の美味珍味に富む、まことに床しい土地柄である。
その名産の一つに加賀蓮根というのがあって、蓮根料理もまた、加賀料理に特色あるものだと聞いている。
というわけで、私は、富山の高志の国文学館の講演を終えてから、そのまま金沢に移動し、同地のモリスハウスにおいてデュオ・ドットラーレの練習に励んだのであった。
練習が始まる前に、ハスネテラスというレストランで軽食をいただいたのだが、私はここに行くと、かならず「蓮根の擂り流しうどん」というのを食べることにしている。
上品な出汁に、蓮根の卸したのを加えて煮ると、その上質な澱粉によって、全体がドロリとした感じになる。そこに讃岐うどんを加えたというスタイルのもの。もともと擂り流しという料理は、白身の魚肉を叩いて擂って、それを出汁に和して煮るという江戸中期から伝わっている古典的な料理だが、この蓮根の擂り流しは、魚肉を加えず、ただ蓮根を擂ったものでトロミ風味を出すという趣向である。薬味には、卸生姜と刻み青葱を加える。
これが熱々で、すこぶる旨い。
そこで、その味をよく吟味し、製法を案じながら喰ってきたので、自宅に戻ってさっそく試作したところ、とてもおいしくできた。ただ、饂飩のかわりに、炊き立てのコシヒカリに掛けてみたところ、うどんに負けず劣らず美味しい「蓮根の擂り流しご飯」ができた。写真がそれであるが、薬味には卸し生姜と刻み青葱、それにちょっと二十日大根のスプラウトが加えてある。なにかごつごつとして見えるのは、敢えて擂らずにざく切りにして加えた蓮根で、これは歯ごたえを楽しむための工夫である。
たいへんに結構なお味でありました。