2019年3月7日木曜日
はるかなりヘミングフォード
必要あって、古い写真帖を取り調べていたところ、こんな写真に行き当たった。
これは、1992年の8月31日に、ヘミングフォード・グレイの村外れ、Great Ouse 川の岸辺での一枚である。今からもう27年前の写真である。ちょうどこの立っているところが、ボストン夫人のマナーハウスの真ん前のところで、私の背後に、その庭に入る鉄扉がある。八月の末ともなれば、イギリスは早や寒くて、こんな厚手のセーターを着ている。こういうセーターはBrenire(ブレナイア)といって、スコットランドの、まあ言わば労働着がもとになっている。このセーターは今も大切に着ているが、すこしも痛んではいない。
1991年に『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(ケンブリッジ大学出版)が刊行されたとのほぼ同時に『イギリスはおいしい』(平凡社)も出て、ベストセラーになったので、私は俄にイギリス関連の仕事に忙殺されるようになった。
しかし、毎夏休みに、いつもイギリスで過ごすようになったのは、まさにこの時分で、今でもあの爽涼なイギリスの夏を心から懐かしく思う。また行ってみたいなあと思わぬ時とてもないが、実際には、もう行くことはないだろう。そう思うと、こんな写真がまた、無上に懐かしく、なんだか涙ぐましい思いさえ湧いてくる。
嗚呼、イギリスの夏!