2020年2月2日日曜日

桜咲く


 きょうは、上野公園の東京文化会館まで、藤原歌劇団の『リゴレット』を見に行ってきた。何年ぶりだったろうか、上野公園は。東京芸大で教壇に立っていたのは、満五十歳までなので、辞職してからもう二十年になる。当時の教え子たちのなかには、今や押しも押されもせぬ第一線の演奏家になった人も少なくない。
 その頃までは、芸大の内外も、なお明治の面影を残していたし、芸大周辺の町場ともなると、いかにも上野界隈という奥床しい風情が横溢していたものだ。
 しかし、きょう行って見ると、昔の建物は多く取り壊されて新しい新式建築に置換えられ、または空しく有料駐車場になってしまっているところもそちこちにあった。上野公園の地下には、立派な有料駐車場が新設されたが、そこに停めると非常に高額な駐車料金を取られるので、私はわざわざ公園からはちょっと離れた池ノ端の100円駐車場に停めて、てくてくと歩いて行った。すると、昔は芸大界隈にはそれほどな人立ちもなく、森閑とした風情が残っていたものだが、今や、外国人が無数に歩き回り、新しいカフェが出来、昔日の面影はもうほとんど残っていない。だが、三段坂を下ったあたりの裏路地には、なおまだ、往年のままの手汲み井戸が残っていたし、芸大時代にいつも行っていた浜寿司も健在のようだった。
 懐かしい思いで歩き回っていたら、公園のなかの寒桜が早くも満開になっていた。いかに寒桜でも、ちょっと咲くのが早すぎるのではないかと思ったが、これも異常なる暖冬のせいにちがいない。ああ、芸大時代が懐かしいなあ。