2008年9月23日火曜日

お彼岸

 萩からの帰り道、中国山地のしっぽというか、秋吉台の近くの山
道を抜けると、もう刈入れも済んだ田の畔に、いちめんに彼岸花が
咲いていた。彼岸花には白いのもあるけれど、やっぱりこの血の色
のように赤いのが彼岸花らしくてよい。中国山地は穏やかで、いわ
ゆる山紫水明の処という風情が横溢している。山は幾重にも折り重
なって、しかも、深からず、高からず、ちょうど人の背丈によく似
合うという感じがする。家々は、この地方独特の茶色い瓦をのせた
古風な作りで、いわゆる小国寡民、鶏犬相聞こゆるという空気であ
る。もし何も心配なく隠居するとしたら、こういうところが良いか
も知れぬ。海も近く、どうかすれば海風の通いすら感じられる。そ
して海の幸山の幸にも事欠かぬ、長門周防あたりの山里はいかにも
味わい深い。