5月8日から10日まで、北九州へ講演に行ってき
た。9日は、苅田町で、『薩摩スチューデント』の話をした。
私はこの町の「町づくりカレッジ」の名誉学長ということになって
いて、年に二回、いろいろな話をしにいくのである。そのあと、博
多に移って、福岡市美術館で開催中の『福沢諭吉展』の記念講演を
した。『福沢諭吉の見ていたもの』という題目で、おもに女性論・
家族論の話をした。その博多は、そもそも美味しいものの多い町だ
が、今回は、またじつに美味しい寿司の店を知った。誰に教わった
というわけでもない。私の定宿としている百道浜(ももちはま)の
ハイアット・レジデンシャル・スイート博多の近くにあったので
ちょっと行ってみたまでである。それがこの写真の店で『まさ庄』
という。付け台の向こうに立っているのが御主人、寡黙で、しかし
篤実な仕事をされる。寿司は東京の一流に劣らない、上品で、過不
足なく「仕事」のしてある、まことに上乗の江戸前寿司であった。
九州も博多となると、こういう名店がひっそりと隠れているので
あった。百道浜に立つTNC放送会館という殺風景なビルの一階
の、何の曲もない構えの店なのだが、寿司の実力は、寿司狂の私が
保証する。醤油などもあの甘い九州醤油でなくてちゃんと江戸紫で
あったのは嬉しかった。しかも値段は、食べたこっちがびっくりし
て恐縮するほどリーズナブルであった。良心的この上もない寿司屋
さんである。もし博多で旨い寿司を食べたかったら、ぜひ訪れてみ
る価値がある。電話092-852-5430