2011年11月3日木曜日

源氏、垣間見の視線


 十一月になった。一日早々から、雑誌『いきいき』主催の、源氏物語についての連続講演をしてきた。この講演シリーズも、もう第五回となった。今回も、会場は神楽坂の出版クラブという渋いところで、五十人ほどの聴衆とともに源氏の面白いところをともに味わった。この会衆は、ほとんどが毎回参加のリピーターの方々で、非常に熱心な空気が、話していても楽しい。まず毎回、ほぼ女性ばかりである。写真でいっしょに写っている方は、ハーブ研究家で、園芸家・随筆家としても高名な桐原春子さん。この講義に毎回参加されて熱心に聴いてくださっている。上の写真は、その桐原さんの最新のご本で、自邸のお庭の植物たちとの日々をつづった、また美しい花々の写真満載の楽しい一冊。

 さて、五回目の今回は、『垣間見(かいまみ)の視線』という題目で、源氏物語のなかにしばしば出てくる「垣間見(覗き見)」というモチーフを取り上げ、空蝉、野分、若菜上、御法の各巻から、おもしろい垣間見の読み所を抽出して、どこをどのように読むべきか、ということを詳しく解析しながら、それを空間的に想像してみるという方法をとった。そういう風に解析して味読してみると、この物語がいかに緻密に周到に、また十分な構想力をもって書かれているかということが痛感される。例によって、講釈の一時間半はまたたく間に過ぎた。