2014年9月27日土曜日

趣味の良し悪し

ヘルシンキは大変に美しい街で、とくにその建築美には心打たれるものがあった。とくに誰の設計だとか、そういうのではないが、ともかく街に櫛比している建築の概ねの高さが揃っていて、しかしどれひとつとして同じようなものがないというか、ネオゴシック、ドイツルネッサンス風、アールデコ、アール・ヌーヴォー、ユーゲントシュティール、モダニズム、新古典主義と、いろんなのがみな美しく整備されて甍を並べているのは、建築好きの私には応えられない楽しさであった。おそらく、ミラノ、ブダペスト、ヘルシンキの三都市こそは、世界でもっとも建築の美しい愉しい街であることは動くまい。
しかしながら、そういう美しい街なのに、なぜか極端な悪趣味もあって、その代表がこの「小便爺さん」(ほんとはなにか別の名前があるのかもしれないが、知らない)である。
港の桟橋に、どういうわけか、こういう赤裸で禿頭の爺さんの巨像があって、それがまた、なぜかドウドウと小便を垂れている。ちゃんとその小便の「出口」の部分もリアリズムで造形されているのは、いちだんと悪趣味であった。
するとこの悪趣味を喜んで、わざわざその股の下から「そこ」を見上げて写真を撮る妙齢のご婦人などもいて、おもわず苦笑せずにはいられなかった。