2017年3月24日金曜日
巴水の日本憧憬
きょう、新著の『巴水の日本憧憬』(河出書房新社)がリリースされた。
去年から編輯・執筆に当っていたものだが、今回は、大田区立郷土博物館の全面的なご協力を得て、多くの資料に直接当って調べることができ、また同館から多くの画像データ使用を許されて、美術書として極めてクオリティの高い出来上がりになったことを、大変に嬉しく思っている。とくにこの大田区立郷土博物館の皆様のご協力には深く深く感謝をしているところである。
巴水は、私が青年時代からずっと愛好し注目して、また昔は作品もまだまだ安価であったこともあり、何十年と蒐集してきたところでもある。今回は、その家蔵の作品をも少なからず版下として使用した。今日では、あのアップルのスティーブ・ジョブズがコレクターとして多くの作品を買い集めたこともあって、俄に注目を浴び、作品は驚くほど高騰してしまったこと、これは嬉しくもあり悲しくもある。
出版にあたっては、木版画の風趣、刷りの味わいを極力再現するために、製本、料紙、印刷などに格別の注意を払い、装訂はコデックスとして、フラストレーションなくページがきれいに開いて、見開き図版も中央で分断されることがないように配慮したところである。しかも極く厚いボール紙の表紙をつけて(現代のボール表紙本?!)じつに立派な書姿を持った一冊に仕上げてもらった。これについては、版元と編集者、また印刷・製本会社の皆様に格別のご努力を頂いたところである。
さらには、川本三郎先生より、すばらしい特別寄稿を頂戴して、花を添えていただいた。今回初めてこういうかたちで紹介する作品も何点かあり、巴水に新しい光を当てるという意味でも、私なりに力を尽くしたつもりである。
これから、できるだけ講演会やサイン会など催して、多くの方々に手に取っていただこうと思っている。
巴水を御存知のかたはもちろん、御存知のないかたもぜひこの際、川瀬巴水という素晴らしい画家が大正昭和の日本にいたことを知って、その美しい版画世界を味わっていただきたいと思うのである。