2017年4月10日月曜日

昆布食パン


 大阪淀屋橋に神宗(かんそう)という昆布の老舗がある。その御主人はさすがに美味しいものが好きで、タバコが嫌いで、しかもお酒を飲まない、ときているので、ちかごろすっかり意気投合し、同社の広報雑誌に料理をつくったり、またご主人の尾嵜さんと対談をしたり、更には、同じく名高い料理人にして、やはりタバコ嫌いで下戸という祇園浜作(はまさく)のご主人ともいっしょに料理談義をしたり、ずいぶん面白いことになっている。
 さて、その広報雑誌に、同社の塩昆布を用いた料理を作ってほしいという依頼を受けて、何品か作った。
 ●蕎麦米の野菜餡かけ、昆布風味
 ●塩昆布入り、甘酒と豆乳のアイスクリーム
というのがその時作った品目だが、じつはそのほかにもアイデアがあった。一つは、衣に昆布を混ぜて揚げた豚ヒレ肉の竜田揚げであるが、これは美味しかったけれども、雑誌には出さなかった。
 もう一つが、ここもとお目にかける「昆布食パン」である。
 なに、作りかたはごく簡単で、同社の塩昆布を細かく切って、粉に交え、自動パン焼き器で焼くだけのことだから、どうってことはない。しかし、その取材のときは時間がなくて焼くことができなかったので、きょう、作ってみた。すると、あら不思議。この神宗の塩昆布は塩だけでなく甘みもあるので、食パンもふんわりと瑞々しく、なおかつ塩気と甘みがバランスよく仕上がったのは期待以上であった。昆布の薫りは幽かにするが、パンの芳香を邪魔する事はなく、ただ、ほのかに旨味が加わったという感じであろうか。とてもおいしい食パンになった。
 もし興味がお有りの方は、大阪神宗の塩昆布(細切り)を買い求めて(通販で手に入る)ぜひ試しに作ってごらんになるとよい。