新潟市のリュートピア能楽堂で、遠藤和久・喜久兄弟の能楽師による二番能があって、去年は曽我兄弟がテーマだったのだが、今年は『平家物語』をテーマとして、第一部は『二人静』そして第二部は『船弁慶』という番組であった。
その解説を終えて、私は帰途についたが、例によって自分の車を運転しての新潟往復、片道約320キロほどの道のりで、まあ独り気楽にドライブしていくにはちょうどいい距離というか、充分に運転の旅を楽しんできた。
しかし、折柄花見時の週末とあって、とくに帰りは日曜の午後、帰途についた時には、すでに上り線は三十キロの渋滞ということになっていた。
このまま渋滞に突っ込むのは楽しくない。
そこで、あちこちのPAで休憩を取り、またはところどころインターで下道に降りて、しばらくは一般国道を走ってみたり、また景色の面白そうなところでは、あれこれと寄り道をしたり、そこらのラーメン屋に入ってみたり、この自由自在こそが自動車旅の醍醐味である。
今回は、日の暮れぬうちにと思って小千谷インターで高速を降り、しばらく信濃川沿いの国道を走ってみた。
やがて信濃川も中流域の荒々しい姿を見せ始め、あたりは豪雪地帯とあって、四月の中旬気温は15度くらいにもなろうというのに、まだまだそこら中に雪が残っている。私はしばらく人気もない信濃川堤を逍遥して、その荒々しい川の景色を写真に収めた。こういう景色に遭遇して、ゆっくりと写真など撮る、自動車旅は楽しいなあ、と改めて思ったところであった。
そんなふうに寄り道のゆっくり旅をしているうちに夜になり、渋滞はもうすっかり解消していたのであった。旅は急がぬに限る。