2021年9月24日金曜日

香茸

 東京があまりにも暑いので、信濃大町の山荘にやってきた。すると、こちらはもう最高気温が22度くらい、夜は15度くらいにもなるので、ライトダウンを着ようかという冷涼さかげんで、まことにすごしやすい。
 安曇野は今や稲刈りの真っ盛りで、そこらじゅうで稲刈り機が動いている。いまどきは、もう手刈りしてはさ掛けにしようなんて人は殆ど居ないので、それはもう昔語りになった。
 秋はまた、秋野菜や茸などの最盛期で、今日ふと地元の農家の直売所に立ち寄ってみたら、正真正銘地元産のマツタケを、東京の半額どころか、五分の一くらいの値段で売っていた。それでも充分高価なので、買いはしなかったが。
 そのマツタケの横に、珍しい巨大な茸を山のように売っていた。これはなんだろうと思ってオバチャンに聞いてみたら、「香茸(こうたけ)」という茸だと教えられた。なんでも炊き込みご飯にしたり、甘辛く煮付たりして食べると、独特の芳香があっておいしいというのであった。写真のように巨大なやつが四株くらい一山で1パック2000円だというので、早速買ってきた。もっともこの茸は出るところへ出ると、この五倍くらいする、マツタケなみの高価なものらしい。
 さて、食べる前に、念のためにこの茸の性質について調査してみると、どうやら無毒ということではないらしく、生のままたべると、喉がイガイガしたり、たくさんたべると吐き気を催したりする毒が含まれているという。これを抜くには天日に干して、からから真っ黒になったやつを水で戻して、茹でこぼしたりしてから使うと安全だということである。なかなか面倒である。食べたいけれど、吐き気は困るので、明日から天日に乾し上げることにした。なので、どんな味だかは今のところ分らない。
 この茸は、ご覧のように、茶色くて鹿の子まだらになってるので、別名「鹿茸(ししたけ)」とも言う。ところがそう書くと「鹿茸(ろくじょう)」という漢方薬と同じ字なので混同されやすいが、このロクジョウのほうは、鹿の袋角の剥落したものを乾燥させたもので、まったく別物である。『徒然草』に出てくるのは、このロクジョウのほうで、シシタケのほうではない。念のため。

付言、その後、大町の古いマーケットにもこれを売っていたので、そこのご主人に、どうやって食べるのがふつうかを聞いた。すると、「なーに、こりゃ泥やなんかを落として、それから一回茹でこぼすと、黒い水が出るでね、それを捨ててから使やぁ、別に問題はないで。ま、いちばんふつうには炊込みご飯だな。もっとも、一番簡単で美味いのは、洗ってから、まるまんま炭火で焼いて喰やあ、そりゃもうご町内じゅうにこの良い香りが漂ってせ、それを喰いたさに、そと歩いてる人がぞろぞろ入ってくるってぐれぇさね。まあ、毒ってほどのものじゃなしに、アクがあるから、それを茹でて抜くってこったね。なんでも関西のほうじゃ、これを真っ黒に乾し上げたのを、二本、桐の箱に収めて、結納んときゃ必ず贈るってね。このへんじゃそんなことはしないけどさ」と、子細に教えてくれた。なーんだ、そんなに恐れることはないらしい。ただ、沢山喰うと、とかく茸類は腹を下すから、注意して食べるといいということであった。さて、どうするか、乾し上げるか、このままちょっとだけ味見をするか。ふ〜〜〜〜む。