2009年3月5日木曜日

高宮教授最終講義

三月はまだ四日になったばかりだというのに、きょう、三田の慶應
義塾大学のキャンパスに行ってみると、びっくりしたことに、山上
の桜が、軒並み咲いていた。三月初旬に桜が咲くとは! しかも昨
日の雛祭りには雪が降ったのだったが。さて、かねて敬愛する塾の
先輩の英文学者高宮先生の最終講義は、漱石の『薤露行』を巡って
の、主に江藤淳と大岡昇平との論争を論じたもので、しかし、この
複雑なる内容を高宮さんは洒々落々、いかにも分かりやすく面白く
説き明かして、一時間半の講義はあっという間に過ぎた。慶應義塾
の大教室を満席にしての最終講義、私にとっては十分に憧憬するに
足る空気であった。自分も願わくはそういう機会を持てるような立
場に居たかったが、ついにそれは見果てぬ夢になった。その意味で
は、高宮さんが羨ましくてならなかった。