2010年12月14日火曜日
池田弥三郎先生
大学時代はほんとうにもう大昔という感じになってしまった。それはそうだ、卒業してから、すでに四十年近い年月が過ぎ、恩師がたも多くは故人となってしまわれたのだから。この写真は、昭和46年とあるから、私が大学三年のときのものだ。前列中央にニコニコして座っておられるのが、池田弥三郎先生。当時はタレント教授として大変によく知られていた。銀座の天ぷら屋天金の令息であったが、商売を継がずに折口信夫の弟子となって国文学を修められた。大変にお酒のすきな、また食通としても知られた方で、しかし、酔って乱れず、見事なお酒であった。この写真は、人形町の老舗鳥料理屋の玉ひでで撮ったものである。当時私ども国文の悪童どもは、池田先生にお願いして、あちこちとおいしいものを食べに連れていっていただく会をやっていた。といっても、みんな真面目にお金を積み立てて、そのお金が貯まると食べに行った。が、そこは池田先生のお供をして行けば、どの料理屋でも、下へも置かぬ持て成しをしてくれたのだ。御馳走をたらふく食べて、酒ももちろん(上戸の諸君は)飲んだが、乱酔ということは決して許されなかった。微醺を帯びて先生はよく江戸の俗謡やら、宝塚の歌やらを歌ってくださったのも、よい思い出である。