2010年12月9日木曜日

須磨源氏

昨日、新宿の朝日カルチャーの『能と源氏物語』という講座の第三回に出講。この講義は、観世流能楽師の坂口貴信君とふたりでやっているもので、私が主に文学としての謡本や能の構造などについて概説し、そのあと、坂口君が、舞を舞ったり、謡を謡ったり、また面や道具などを持参して実物を示しながらの説明をしたり、とまことに欲張った企画、毎回正味三時間という特別講座である。今回は、源氏を題材とした能のなかで、唯一光源氏がシテの『須磨源氏』について。一見なんでもないように見える謡の詞章のなかに、なかなか奥深い趣向が仕掛けられているのを分析しつつ、あとは一部の謡と、早舞の解説と実技、中将と平太の面の解説、さらには扇(中啓)の各種を見せたあと、私が実験台になって、実際に後シテの源氏の装束を付けるところをお目にかけた。写真はその直面(ひためん)のところだが、このあと実際に面や鬘などもつけて完全扮装。しかし、この装束は全部で二十キロくらいあるもので、起ち上がると、まるで重りを背負った如く、足下がふらつくのであった。こんな装束を付けて、面を付けてほとんど視界を奪われたなかで能を舞うのだから、能役者というのは凄いものだと改めて感銘を受けた。