なかんずく、このバラは、毎年今ごろになると、この位置に、ただこの一輪だけの可憐な花を咲かせる。そうしてずいぶん長いこと咲き続けるから感心だ。薄い黄色に花弁の先だけが紅をつけたようになっていて、その可愛らしさはなんともいえぬ。最近は、生ゴミを乾燥させる機械でからからに乾燥させてから、これらの植木鉢にも栄養としておすそ分けするのだが、そんなのを食べてかろうじて花をつけるのであろうか。栄養があまりよくないから、アブラムシなども付かないのは、思わぬ余得というべきかもしれぬ。ともあれ、華々しい園芸品種の大輪のバラなんかより、この「野のバラ」ともいうべき風情の一輪の好ましさ。私はなんでも、こういうささやかなものを好む心の癖があるのである。