2012年1月17日火曜日

いきいき

 1月16日は、神楽坂の日本出版クラブというところを会場として、雑誌「いきいき」主催の源氏物語講演シリーズの第六回をやった。今回は、「夫婦喧嘩」がテーマで、源氏と紫上の、腹の探り合いのようなやりとりと、夕霧と雲井の雁の、もっと陽性で憎めない喧嘩沙汰と、その二つを比べながら、源氏物語が、いかに細かなところまで、人心の綾を穿って書かれているかというところを、すこし詳しく読んでみたのである。そうすると、時代や身分は違っても、やはり男と女の心のすれ違いのようなことは千古不易だなあと、しんみりもし、おかしくもあり、また人間はかわいいものだなあと痛感するのであった。
 今回も、いつも若々しくお元気な清川妙先生と、園芸家・エッセイ作家の桐原春子さんと、お二方が特別聴講にお見えくださった。
 詳しく読めば読むほどに、源氏物語の、精妙巧緻な筆の運びに、いつも感心させられる。とかく、ただ読んでいるだけだと、ついついスーッと通り過ぎてしまいがちなものだが、こうして講釈をするために詳しく勉強をすると、なんとなく理解したつもりで通り過ぎていたところにも、こまかな文章の綾が仕掛けられてあったことに、ふと気付いたりすることが多くて、つくづく大変な作品である。
 朗読したり、講義したりの間に気付いた謹訳の誤りや、不十分なところについては、増刷のたびに修正補筆しているのだが、今後とも、虚心坦懐にこの大文学に向かい合って、日々少しでも原作そのものに肉迫していくように心がけたいと、そう思うことしきりである。