2009年11月2日月曜日
岩瀬文庫
名古屋の少し東あたりに、西尾市という町があり、そこに「岩瀬文庫」という有名な古書ライブラリーがある。これは同地の岩瀬弥助という肥料商の富豪が、私財を投じて収集した古典籍の宝庫で、私も昔、若い頃には、よくこの文庫の浮世草子を調査研究するために通ったものだった。きょうは、その岩瀬文庫主催の講演会に招かれて、一時間半みっちりと古書の話をしてきた。折からの悪天候のせいもあってか、聴衆は少なかったが、しかし、ほんとうに熱心で気持のいい雰囲気であった。夕刻、終わって直ちに帰途につき、あいにくと荒天模様となって豪雨と霧の中央高速をひた走って戻ってきた。ひさしぶりに、岩瀬文庫の古書の香りをかいで、懐かしい思いにしばし浸ったことであった。しかし、私が岩瀬文庫に通っていたのはもう三十数年の昔なので、今では駅舎も街路の景観も文庫の建物自体も、なにもかも様変わりで、あたかも浦島太郎の心持ちを味わった。