2010年8月29日日曜日
野宮
昨日は、新宿の朝日カルチャー内の能舞台で、『能と源氏物語』の講座の第二回をやった。今回のテーマは、六条御息所を主人公とする名作『野宮』。前回同様、坂口貴信君に来てもらって、妹の翠君とともに、実演を交えて能としてのあれこれを面白く演奏してもらった。私は、もっぱら原作の葵、賢木などの巻々に見える六条御息所その人について、主に詞章方面から解説したが、なんといっても、貴信君が、じっさいに「増(ぞう)」の面を三面持参してくれて、その比較や、実際に面をかけてみることについてのノウハウなど、面白い話をしてくれたのは、今回の目玉企画であった。左の人は、受講者で、生まれてはじめて本物の能面をかけてみているところ。ただし、面の裏側に当てをつけないで、ただ面をかけると、実はせっかくの能面が全然生きない、ということを知ってもらうためにつけているので、彼女の面のかけかたは、実は正しくないのである。右が貴信君と、翠君。こちらはちゃんと当てをつけて正しい位置にかけてみているところ。面をかけるとき、凛とした空気が張りつめる。