例年に比べて、やはり秋から冬への歩みが少しずつ遅くなっているように感じる。この夏の酷暑が、なお亡霊のようにその名残を留めているのであろうか。
きょうもまた、よい小春日であった。さるなかに、小金井のあたりはまだまだ田園的で、日中に歩き回ってみると、あっと驚くように美しい風景に遭遇することがある。きょうもきょうとて、学芸大学の横手の道を通ると、そこに、こんな色鮮やかな景物を発見した。桜の老木に蔦が絡まって、その桜紅葉蔦紅葉が映発しあっているのであった。きょうで霜月も終り、あすからは師走である。ああ、もう一年が経ってしまう、となにやら哀しい思いにかられる。この一年も源氏また源氏で過ぎてしまった。そうして、まもなく梅枝の巻を書き終わろうかというところに来た。ちょうど半分というところだ。源氏は手ごわく、面白く、そして美しい。