2012年2月17日金曜日

聖パウロの回心


 来たる三月六日、立教大学タッカーホールを会場として、新作能『聖パウロの回心』が初演される。これは、観世流ご宗家観世清和師の企画で、私が台本を書き、清和師の付曲・演出・シテで創作した作品である。ただし、今回は立教小学校の在学生と父兄が対象の非公開公演で、ゆくゆくは能楽堂での公開再演が期待される。
 先に、朝日新聞にも清和師へのインタビューが大きく取り上げられたが、中世末キリシタン能というものがしきりと行われた歴史がある。しかし、キリシタンの禁教令によって完全に抹殺され、今日ではまったく実体がわからなくなってしまった。だが、聖書からの作劇であることは当然であったろう。今回は、そういう歴史を踏まえて、聖書のなかでも劇的なエピソードである、サウロ(パウロ)の回心を、能に作劇したもの。私の台本は、聖書に忠実に基づきながらも、中世の能の言語、すなわち文語によって書いた。やはり能には能の言葉がよろしいので、口語能というスタイルを私は取らない。上の写真は、14日に行われた第一回の打合せと型などの確認のスナップで、これから立ち稽古などを経て、本番に至る。14日には細かな進行や型などを清和師とともに決定。写真は、舞台の上でおおまかな進行を試みて話しあっているところである。舞台上、右から、坂口貴信、岡久広、上田公威の各師。松濤の観世能楽堂において。

2012年2月3日金曜日

歌を歌ってきた!

 今日は、NHKラジオ第一放送で、毎月第一木曜日にレギュラーで生出演している『つながるラジオ』「リンボウ先生の、これが私の暮らし方」の放送日であった。今回は、「まじめに遊べば人生愉し」というテーマで、ともかく「歌」を中心とした趣味の話。もともとこの企画は、リスナーから、どうしても私の歌を聴かせてほしいというリクエストがあったとかで、NHKのほうから、何度か頼まれた揚げ句に、柿沼キャスター(早稲田大学グリークラブ出身)とのデュエットなら歌ってもいいということで妥協したという経緯であった。
 しかし、いざ蓋を開けてみれば、C505なんて巨大なスタジオに、スタインウエイのグランドピアノまで用意して、録音技師やら、何人ものADやらがついて、ととんでもないおおごとになってしまって、ややや、と思ったことであった。
 けれども、やることになってしまったのだから、しかたない。覚悟を決めて、一回だけ柿沼さんと合わせ練習をして、あとはぶっつけ本番。曲目は滝廉太郎の『花』(これは石山さんにも参加してもらって三人で歌った。私は高音部を担当)と、私の訳詩による『アロハ・オエ』(こちらは、柿沼さんとのデュエット、こんどは低音部を担当した)やはりこれがそのまま生で全国に放送されると思うと、舞台とはちがった緊張感があった。ま、生まれて初めて放送で歌う、緊張するのもしかたない。しかし、まあまあ、なんとか歌い終えて、ホッとしているところである。ピアノ伴奏は、いつも伴奏してくれる、名手五味こずえ君。ああ、疲れた! 放送は舞台より疲れるかもしれない。