2013年5月31日金曜日

講演会とサイン会のおしらせ

既報のごとく、『謹訳源氏物語』全十巻の完結を記念して、丸善本店で講演会とそれに続くサイン会を開催することになったので、この欄を借りてお知らせします。講演は、源氏をどう読んだらその面白さが感得できるか、というようなことを中心にお話しするつもりですが、まだ詳しいことは決めていません。
日時などは次のとおりです。

 

「『謹訳 源氏物語』(祥伝社)全十巻完結記念 林望先生 講演&サイン会」

丸善 丸の内本店
開催日時:2013年06月21日(金)19:00 ~
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丸善・丸の内本店 3F日経セミナールーム

定員100名様
要整理券(電話予約可)

参加方法
○丸善・丸の内本店和書売場各階カウンターにて、5/30(木)以降に対象書籍のいずれかをご購入の先着100名様に整理券を配布いたします。
○発売前の商品はご予約にて承り、書籍ご購入時に整理券をお渡しいたします。
○整理券がなくなり次第、配布終了といたします。

※イベントにご参加の方に、“朗読「謹訳 源氏物語」サンプルCD”を差し上げます。


対象書籍
『謹訳 源氏物語』第一巻~第十巻(林望著/祥伝社刊)

ご予約およびお問い合わせ
丸善・丸の内本店 和書グループ 
03-5288-8881(営業時間 9:00~21:00)

2013年5月29日水曜日

いよいよ発売

さて、お待たせしております、『謹訳源氏物語』第十巻が、まもなく刊行になります。すでに再校まで済ませて、現在、印刷・製本の過程に入っており、店頭に並ぶのは、おそらく六月の七日前後になると思います。
2010年の三月に第一巻をリリースして以来、三年あまり、ついに第十巻が出て、これで長く苦しかった、そして楽しくもあった仕事が、いちおうの結末に至ると思うと、なんともいえぬ思いがします。
この三年間、おかげさまで、『謹訳源氏』の知名度も段々に浸透し、これから全巻完結後に購入を考えている図書館なども少なからぬことと思いますので、次第に皆さまのお目に触れる機会も多くなると思います。
このデザインは、私が自分で担当致しましたが、地色は漆塗りの深い朱色をイメージし、また天部に少しだけ各色を配したのは、袖口からこぼれる重ねの色という風情、そして全部の巻が揃うと十二単のような感じ、とそんなことを思ってこうしたデザインにしました。第一巻は若草色、第十巻は藤紫、とそのように初めから決めてありましたが、その余の巻々は、各種の色を試みながらデザイナーと協力しつつ決めていきました。帯と表紙下に「源氏香」の形をあしらって、なおタイトルの白文字は二度の重ね刷りという凝った印刷になっています。装訂そのものはコデックス装といい、往古日本に行われた綴葉装を学び、カバーを外すとあたかも和装本のように見えるようにしました。そうして背表紙のない分力学的に若干の弱みがありますので、それはカバーの料紙を非常に重い厚い紙を使用することで補強しています。しかし、パッと開いて戻らないというこの装訂は、特に書見台に置いて読むというときに絶大の威力を発揮します。
どうか皆さま、末長くご愛読のほど、心よりお願い申し上げます。

2013年5月28日火曜日

ターナーの画業

きのうは、イギリス大使館の大使公邸で小さな講演をしてきた。
この秋に、東京都美術館など各地を巡回する大ターナー回顧展が開催されるについて、主催者の朝日新聞社が、後援のイギリス大使館を会場として、大使御臨席のもと、記者発表のプレゼンテーションを開いた。
私は、どういうわけか、その基調講演のようなものを頼まれて、三十分ほどの短い講演をしてきたのである。
私はターナーとコンスタブルとが全くの同時代人であるところから説き起こして、しかし、その生涯や画業は正反対であったと言ってもよいということを論じ、ターナーの画業がいかに単なる写実から飛躍して、虚構や想像や創造に満ちた営為であったかを論じた。
だからこそ、ターナーは当時の画壇やパトロンたちに人気を博し、生涯に14万ポンドとも言われる巨富を蓄積できたのであったが、これと対照的に愚直なまでに田園風景の写実をしつづけたコンスタブルは、まったく人気なく、ついに妻の持参金まで食いつぶして赤貧失望のうちに世を去ったのだ。
そういうことを、彼の代表作を何枚か映示しつつ、子細にその絵を点検などしつつ話しをすすめたのであった。
写真は、その英国大使公邸の会場。右手に背中を向けている白髪白皙の紳士が現駐日大使ヒッチンズ氏である。ヒッチンズ大使も見事な日本語で、面白いスピーチをされた。彼はほんとうに温容、気品と教養に満ちた素敵な紳士である。

2013年5月24日金曜日

グリコピア

22日、埼玉県北本市にあるグリコの工場(グリコピア・イースト)へ見学に行った。といっても、これはジャフメイトという雑誌の仕事で、特集のための取材にいったのである。
工場というものは、あまり見学したことがなかったが、実際に行ってみたら、思っていたよりずっと楽しいところであった。
そもそもグリコという会社は、創業者の江崎利一翁が、牡蛎の茹で汁が捨てられているのを詳細に調べたところ、グリコーゲンその他の豊富な栄養が含まれているのに着目して(江崎翁は薬種業を営んでいたので、こういう発想を得たのであろう)これを含む栄養菓子を子供のために作ろうと、そういう世のため人のために考えたことから発したのであった、とそのことを知っただけでも、一つの知見として有益であった(だから今でもグリコのキャラメルには牡蛎エキスが配合されている!!)。
この工場ではプリッツを作っていたが、今や工場といっても、ほとんどが自動機械で、整然とコンピュータが制御しているので、まことに壮観であった。
そして、一般の人がよくこの会社の経営理念を理解できるようにと、面白く配慮しながらとてもよく考えられている工場であった。
見学は予約しないとできないのだが、人気があって、つねに予約はfullの状態だということである。

2013年5月21日火曜日

ポンセン

今、昭和もはるかに遠くなって、もはや「昭和時代」という感じが色濃くなった。そういうなかで、「三丁目の夕日」のような映画が当ったりするのもむべなるかなというところだが、昭和も二十四年生まれの私などは、このごろしきりとあの時代が懐かしくてならぬ。
『東京坊ちゃん』という小説は、その昭和の少年の日々を描いたもので、ほぼ自伝的な作品なのだが、昭和の二十年代三十年代には、まだまだ戦争のツメ跡がいくらも残っていた。
私たちは、たとえば臨海学校などに行くときは、必ず、一泊につきお米を一合ずつ持参するという決まりであったり、またおやつのお菓子なども、今みたいな素敵な菓子などは薬にしたくもありはしなかった。それで、午後になると、どこからともなく「ぽんせんべい」というものを売りに来る行商のオジサンがやってきた。すると、こどもたちは、またこれも、お米を小さな袋などに入れて、そのオジサンのところへ行き、その自分の差しだした原材料の米を以て、ポンセンベイを作ってもらうのであった。なんだか薪でボウボウと熱している窯の上に皿のようなものがあって、しばし加熱の後に、レバーをぐいと押し下げると、ポンと音がして、つまりライスクリスピーができる。それが丸い型のなかで爆ぜるもので、米どうしがつながって煎餅になるのであった。
さて、このことを、私はずいぶん昔『音の晩餐』というエッセイに書いておいたところ、これを読まれた広島の槙野さんという方が、わざわざその懐かしいポンセンを自作して送って下さった。なんでも、そのポンセンの機械を買って、いろいろと試行錯誤の末に復元製作に成功したというのであった。
食べてみると、いやあ、なつかしい。お米の焼けた香りが、まさに昭和二十年代の我が少年時代そのものであった。そこで、これを写真に撮ってここに載せることにした。黒く見えるのは黒豆の爆ぜたものであるが、槙野さんの記憶では、往時必ずこの黒豆が入っていたのだとのこと。私の記憶では白米だけであったから、これは地方により時代により、いくらか変異があるのでもあろうか。それにしてもなつかしい味をありがたいことであった。

2013年5月18日土曜日

謹訳源氏物語全巻成就記念トーク&サイン会

おかげさまにて、『謹訳源氏物語』第十巻も、無事再校まで終えて、あとはいよいよ書店店頭に並ぶのを待つばかりになりました。
この際、十巻の成就を記念してサイン会などを各所で開催しようということになって、その劈頭を飾って、かねて本書に並々ならぬ力を入れて販売してくれているくまざわ書店の、相模大野店で、まずはやろうということになった。
ただのサイン会だけではなくて、お店のイベントスペースを利用して、短いトークをしたあと、サイン会という段取りである。
相模大野一円にお住まいの方々で、源氏に、あるいはリンボウの世界に興味がおありの方々、どうぞ揮って御参加ください。
当日は、ご参会の方々に多少のプレゼント(中身はお楽しみ)も用意しました。