2010年10月29日金曜日

ラムといんげん

 料理というものは決して難しいことではない。あれこれと凝ったことをしても、かならずしもおいしいとは限らない反面、ごく単純な料理にほんとうのおいしさが詰まっていたりする。ここもとお目にかける写真は、今朝の朝食のメニューで、なーに、べつにどうということはなく、ただ、ラム肉とさやいんげんを炒めただけのものである。ラムは、私は朝食で食べることが多い。朝食でラムを食べると、少しも胃にもたれず、すっきりして、しかし満足感があるのだ。というわけで、私は大のラム党なのであるが、この写真の一皿は、ラム肉の脂肪だけで、ほかの油脂分はゼロ。ただフライパンにラムを焼いて、その脂でいんげんを炒めて、塩と胡椒だけで味を付ける。ただそれだけであるが、これが旨いねえ。

2010年10月28日木曜日

素適音楽館

 きのうは大忙しの一日だった。昼間中は、テレビ番組の収録が、私のオフィスであって、夜は講演だったからだ。このテレビ番組というのは、横浜の港北と川崎エリアをカバーするCATV局のYOU-TVというのがあって、その『神山純一のナイス素適音楽館』というトーク番組に出演したのである。ケーブルだから、ごく限られたエリアの人しか見られないのが残念であるが、なかなか楽しいトーク番組になった。写真は、中央がそのホスト、作曲家の神山純一さん、右は司会の小林佳果アナウンサー。番組は三回分収録したが、その三回目の風景で、後ろにピアノが見えているのをみてもわかるように、主に音楽の話をしているところである。とくに、わが愛する大歌曲『あんこまパン』を巡っておしゃべりをしようというところ、前に置いてあるのがそのあんこまパンの実物で、このあと神山さんと二人で舌鼓を打ったが、なかなか結構に作ってあった。また、『謹訳源氏物語』の朗読コーナーも設けたほかに、謹訳源氏を書く話、学問と若い時代の話など、神山さんのソフトでインテリジェントな語り口に誘われて、日頃はあまり話せないことも大いに談論風発、こういう番組をメジャーなテレビ局でやってくれればいいのになあ、と思うことしきりであった。
 夜はまた、白金アートコンプレックスというギャラリーを会場として、和塾という勉強の会の人たちを相手に、源氏物語の話をした。スタッフ以外の参加者は全員女性で、大変に熱心な良い空気だった。この講演会の模様も、上記のテレビにインサートされるはずである。

2010年10月25日月曜日

新井りんご園の紅玉と日の丸皿

林檎の季節がやってきた。今年は夏の猛暑でどうだろうかと案じていたが、例年にも増して素晴らしい紅玉が贈られてきて、ほっと安堵の胸をなで下ろしているところである。今どきは、紅玉もだんだんと作られなくなってきて、まことに遺憾の極みである。なにしろ、私は林檎は紅玉と国光さえあればいいと思っているのである。とくにこの紅玉は、爽やかな酸味が強く、煮ても崩れず、しかも色が天下一品に美しい。通常リンゴは煮ると皮の赤味は褪せてしまうのだが、この紅玉は、完熟ものであることもあって、驚くほど色がしっかりしている。煮てもこれほどに美しい紅が目を打つのである。このリンゴは、信州伊那の新井りんご園というところで、新井学さんという篤農家(もとは学校の先生であった由)が丁寧に減農薬栽培し、葉摘みもせず、しかも十分に完熟してからの収穫をしたという逸品中の逸品で、今年のは、紅玉ながら蜜入りであった。もちろんそのまま齧ってみれば、嗚呼、なんというバランスの良さ。甘味と酸味が天来の美味という感じに凝(こご)っている。それを干しぶどうと白ワインを加えて煮たのが、この写真。パイに包めばアップルパイに適し、そのまま器に盛って食べるもよし、牛乳をかけてApple fool という趣向にしてもよし、チーズと一緒にパンにのせてもよし、これほどの美味はなかなかあるものでない。新井りんご園の連絡先は、
 0265-35-9256 (電話/ファックス兼用)
である。新井さんには未だ面晤を得ないが、昔の教え子のK君が、いつもこれを贈ってくれるのである。
 ちなみに、この林檎を載せてある皿は、「日の丸皿」といって、戦時中に作られた焼き物である。隠れて見えないけれど、真中に赤い日の丸が筆で手描きにしてある。なかなか古拙な味があって良いものである。

2010年10月22日金曜日

テレビCM

これが、先日この欄でご報告したカタログハウスのコマーシャルの一場面である。大山鳴動鼠一匹という感じで、さんざん大騒ぎして長時間かけて撮影したけれど、実際の放映は30秒というはかないもの。それでもほんとうに上手に編集するものだと、さすがその道のプロの手腕には脱帽敬礼のていである。このコマーシャルは、テレビ朝日の『徹子の部屋』と、『情報ステーション』火曜日、の二枠で放映がある。見ているといくつもヴァージョンがあって、毎週違っていたりするので、興味あるかたは、是非ご覧下さい。
このコマーシャルのなかでは、後ろのほうにわが愛する「禁煙団扇」が鎮座ましまして、けっこう目立っている。こんなところでも、なんとか喫煙などという悪習慣を撲滅してしまいたいという一心で、及ばずながら努力しているところである。 

2010年10月20日水曜日

鮎の塩焼き

『謹訳源氏物語』第四巻の見本刷り(本を刊行するとき、本格的に書店に配本されるまえに、見本刷りというものを少部数つくる。これを、刊行に先立つことおよそ一週間くらいのころに著者のもとへ届けてくれるのが日本の出版界の慣行である)が無事届けられた。水色の帯の色も美しく、製本もしっかりしていて、よい仕上がりである。そこでさっそくその完成のささやかなお祝いをした。八王子の豆腐屋うかいという、なかなか愛すべき店に行って、豆腐料理をたべたが、写真はそのなかの鮎の塩焼きである。今ごろの鮎のこととで、子持ちで、鮎としては本格的な味わいではなかったが、子持ちは子持ちでまた別のおいしさがある。骨が非常に柔らかく、頭から尾まで、なにも残さずきれいに食べてしまった。私は、川魚では、天然のヤマメの塩焼きを最も愛好し、鮎はそれに次ぐ。イワナとか、ニジマスなどになると、ぐっと私のなかの評価が下る。さてさて、またがんばって第五巻の続きを書かなくては・・・。

2010年10月13日水曜日

謹訳源氏物語第四巻

 まだ実際に書店に並ぶまでには、二週間ほどかかるかと思うけれど、『謹訳源氏物語』の第四巻の装訂が仕上がってきた。すでに、アマゾンなどでは予約が可能になっているので、第三巻までお読み下さった方は、ぜひ引き続きのご愛読を。
 このあたりから、源氏物語も、ますます劇的な展開をみせ、手に汗握るというか、息もつかせぬというか、この物語の世界もますます深まってくるという感じがする。ほんとうは九月には刊行の予定だったのであるが、六月、八月と、相次ぐ病気に阻まれて仕事が延引し、心ならずも一ヶ月の刊行延期を余儀なくされた。読者の皆様には、心よりお詫びし、またこの先はなんとか遅延なく刊行できるよう、目下最大の努力を重ねているところであることをご報告して、引き続きご支援ご鞭撻をこいねがう次第である。

2010年10月12日火曜日

ほんとうにいきいき

「いきいき」という会員制の雑誌をご存知だろうか。私はこの雑誌に、最近源氏物語についてのエッセイを連載開始したのだが、そんなご縁もあって、10月9日に清川妙さんと、日本の古典文学を巡っての講演会と対談をしてきた。清川さんは、奈良高等女子師範ご出身、現在89歳というから、私の母と同じ歳である。私の母は、もう十三年ほど前に他界したが、清川さんは、いやはや、とんでもなくお元気な方で、頭脳はまったく明晰、表情も豊かに、つぎつぎと面白い話を繰り出される。この柔軟な頭脳・・・それにお人柄も・・・と、積極的に前進していこうする活動性、知的好奇心、プラス思考、すべてが私どもにとってのお手本になるような方である。清川さんは、枕草子や徒然草がご専門で、昔実際に女子教育の教壇に立っておられたというご経歴だが、その後、主婦をされていたところから、また一念発起して作家になられ、さらにいまは、またその酸いも甘いもかみ分けた豊かな人生経験を生かしての、楽しい古典講釈に力を注いでおられる。「いきいき」でも、枕草子についての連載をずっとしておられたが、これがほんとうに深みのある面白い連載であった。また徒然草の連載も最近まで続けておられたし、なおかつ万葉集についてのご著書だとか、古典一般についていろいろと発言をしておられる。この日の会は、ほとんどが清川ファンの集いという感じでもあったけれど、しかし、聴衆の熱心で真面目なことは特筆すべきもの、遠く岩手、広島、佐賀など、各地から駆けつけた(ほとんどはシニアのご婦人がた)聴衆で大変な熱気がこもった。私の話しも熱心に聞かれ、次に清川さんの講演は、講演というより女学校の教室という感じさえした。あとは談論風発、楽しい対談になった。

2010年10月11日月曜日

菊と索麺

高く晴れて、まことにからりと気持ちの良い秋晴れになった。各地で運動会などをしている学校では、さぞよい一日となったことであろう。秋晴れになると、きょうなどは28度くらいまで気温が上がって、半袖でちょうどいい感じである。さては、お昼に冷たい索麺を食べようというので、作った。折も良し、きのう八戸から食用の菊が送られてきたので、この花びらを毟って索麺と一緒に茹で、菊索麺という秋らしい趣向とした。この菊は、阿房宮(あぼうきゅう)という八戸特産の名品で、菊花特有の苦味がなく、見て美しく食べておいしいというものである。今年は気候がよいのか、例年になく見事な花で、食べるのは惜しいくらいであった。さて、その花びらを茹で、索麺を茹で、氷水で冷やし、ご覧のような形に作って、ツユに卸し生姜をたっぷりと加えて食べた。索麺とはちがったサクサクしたような食感と菊の芳香、そして美しい色、菊索麺はふとした思い付きで作ったのだが、秋の食味として上乗のものと見つけた。うまかった。

2010年10月6日水曜日

テレビのCM

 こないだ、カタログハウスのテレビコマーシャルの撮影をした。たった十五秒ほどのコマーシャルなのだが、撮影は非常に大掛かりで、吃驚仰天。撮影は西荻窪の民家を改造したハウススタジオを借り切って行われた。このシーンは、通販生活を手に、いろいろとインタビューを受けているところ。こちらがわの後ろ向きの人が監督で、すべてを仕切っている。それから、コンピュータを前に仕事をしているシーンだとか、じっくりと通販生活をながめているシーンだとか、いろいろととって、それをうまく編集するのである。このCMは、通販生活の秋冬号のそれだときいたので、おそらく間もなくオンエアになるのではないかと思うけれど、全国放送で、テレビ朝日のニュースステーションなどの時間帯に放送されるらしい。乞う御期待。

2010年10月3日日曜日

ああ、秋!

 このごろの日本は異常な気象がだんだんと普通になってきて、夏はひたすら暑く長く、冬は毎年暖冬ばかりで、ときどき豪雪、みたいな感じである。そうして、もっとも気持ちよく美しい季節である春と秋は、どんどん短く貧弱になっていくような気がする。ふつうだったらもうとっくに秋風が吹き、秋草が咲く季節になっても、連日猛暑日に熱帯夜というありさまで、いつになったらあの気持の良い秋が来るんだろうと、ずいぶん気を揉んだところだった。しかし、暑さ寒さも彼岸までの諺どおり、彼岸の中日を境に急に秋らしく冷涼な日々となった。けれども、こういう気持ちのいい日々は長くは続かない。まもなく暗澹たる霖雨や、台風や、そしてあっというまに冬の寒さがやってくる。
 この写真は、先日豊前を逍遥した折に撮影したもので、秋らしい高い空に、一面秋草の咲き敷く田園、これこそ日本の秋の原風景である。このあたりの田んぼでは、まだ稲刈りは始まっていなかった。が、もう稲穂は実って、秋空によく似合っていた。ああ、美しい秋!
  早稲の香や分け入る右は有磯海  芭蕉