2010年7月31日土曜日

湖水地方のこと

きょうはこれから、福島県郡山市の市立美術館の講演のため、車を転がして郡山入りする。講演は明日の日曜日午後。いまこの美術館では、巡回展のビアトリクス・ポター展をやっているので、そのイベントの一環である。といっても、私自身はピーターラビットのことはあまり良く知らないので、今回は、ポターが愛した湖水地方を始めとするイギリスの田園案内という趣向で、その美しい風景と背後の思想についてお話ししてくる予定である。
この写真は、湖水地方、コニストン湖水のほとりにたつ、ジョン・ラスキンの旧居からみた湖水である。ラスキンは、社会主義者を標榜していたが、その邸は貴族の別邸風の豪邸で、とても社会主義者の家とも思えない。湖水地方は、今ごろ世界各国からの観光客でごった返しているとおもうので、私はあまり近づきたいとは思わない。それよりも、湖水地方と同じように美しい田園が各所に広がっているので、そういう無名の田園を逍遥するのこそ、もっとも楽しいイギリスの夏の過ごし方かなと思っている。源氏の仕事が終わったら、ぜひのんびりとイギリスの夏の田園に遊びたいものだと思っているところである。

2010年7月30日金曜日

謹訳源氏物語第三巻

わが、『謹訳源氏物語』も、6月の25日に第三巻を無事刊行、この巻には「松風」まで収めてある。源氏も須磨明石以降、いよいよ波乱万丈の読み所が続出で、泣かせどころも多く、大変に面白い。この巻から、帯の幅を少し広くし、表紙の質的なアップも図った。
ちょうど、私は、この第三巻の校正中に、肺炎にかかって仕事がストップしたために、刊行が1週間ほど遅延したが、その後、無事回復して、七月末までには、第四巻の分を全部脱稿。これから第五巻のところの執筆にとりかかる。源氏ともなると、校閲者の校正も詳密を窮めて、それが校正者校閲⇒著者初校⇒校閲者再校⇒著者再校⇒校了という手順でなんども校正刷りをやりとりするので、これからまた第四巻の刊行まで、神経を磨り減らすような作業が続く。しかも第五巻の執筆とそれを平行して行うので、並大抵ではない。ちょうど去年の8月1日に起筆して、一年でここまで辿り着いたかと思うと感慨深いものがある。

2010年7月27日火曜日

旅へ!

以前、学校の先生をしていたころは、毎年今ごろになると、いよいよ夏休みが始まるので、ほんとうに嬉しい気持ちがしたものだった。ふつうの会社員とはちがって、大学の先生ともなると、当時は、ほんとうにフルに二ヶ月ほど休みになった。といってもその間遊んでいてはいけないので、私の場合は、学期中は忙しくて手が着かないさまざまな研究とか執筆などをまとめて出来る絶好の期間であった。若いころは、いつも信州の別荘にこもって世俗を離れ、清爽な空気のなかで勉強したものだったが、著述専業になった今は、忙しいばかりでまったく休みはない。せめて数日の旅にでも出てみたいと思うけれど、それすらままならぬ。嗚呼。写真は、イギリスの骨董市でいくつか求めてきた古いトランクで、実に味がある。こういうのを見ていると、「ああ、旅に出たい!」とつくづくおもうのだ。

2010年7月25日日曜日

梵の普茶料理、その涼味

 毎日が源氏の執筆に追われて過ぎていくままに、なかなかこの写真日記の更新も滞りがちで、申し訳ありません。
 さて、きのうは、ひさしぶりに、かつて東横短大で教鞭を執った仲間たちと久闊を叙して会食、まことに楽しい一夕であった。会食は、例によって、わが愛する普茶料理店、入谷の「梵」。なにしろ、こう暑い日が続いて体力も消耗し、食欲も減退しようかという季節になると、食養生はなによりの緊要事である。元気も病気も食事から。そういうわけで、純粋な精進料理で、しかも、どの品も素晴らしく美しくおいしい、手の込んだ料理ばかり。いつ来てもこの店のお料理には失望させられることがない。店主古川さん始め、皆さんの努力のおかげであろう。昨日も、おいしいおいしいと皆で感激しながら、ゆっくりと食事。部屋は禁煙、閑寂で雰囲気の素晴らしい個室で会話もはずみ、なんともいえない忙中閑を味わった。写真の料理は、生春巻き風にレタスで包んだ香味野菜や湯葉などに、白舞茸などを絡めた八角風味のジュレをたっぷりかけた冷製の一椀。見事な料理であった。