2017年7月20日木曜日

バター不使用のショートブレッド


 かねて、ショートブレッドというお菓子は、私の愛好すること深きものであるが、それが美味しいけれど、めったやたらとカロリーが高いという欠点がある。なにしろ、組成からして、全体の三分の一はバター、六分の一は砂糖、というのだからしかたない。美味しいものは体に悪い、そこをどうクリヤーするか、私はまた灰色の脳細胞を運転することしばし、ついによいことを思いついた。
 バターに代えて、オメガ3脂肪酸に富むココナツオイルを使ったらどうか。また小麦粉に三分の一くらいきな粉を交えたらどうか、この二つのアイデアを、さっそく実行してみたところ、見事に成功したので、ここもとご報告する次第である。
 ショートブレッドの製法・材料については、拙著『ホルムヘッドの謎』に詳しく出ているのでごらんいただきたい。その材料の小麦粉300gのところを、小麦粉200g+きな粉100gに変更し、バター200gに代えて純良なココナツオイル200gとする。あとはほぼ作り方は同じだが、ココナツオイルには塩が含まれていないので、かならず塩を一つまみ加えていただきたい。さらに、ココナツオイルの香りが強すぎるといけないので、シナモンを若干加えてみた。
 焼き時間は、今回は生地の厚みを7ミリくらいで作ったので、180度で十五分とした。こうしてじっくりと焼き上げた結果、これはまた見事にショートブレッドが完成。食べてみると、さくさくしてなんともいえぬ美味、これでバターなしとはとうてい思えない。ココナツオイルの香りもちょうといい程度に感じられ、シナモンとよいバランスとなった。これならいくらでもたべられる。きな粉でカリウムやイソフラボンなども取れるし、これは健康志向のショートブレッド、どこかのお菓子屋さんが作って売り出してくれるとよろしいのだが。

2017年7月19日水曜日

ルバーブ

まことにまたご無沙汰で申訳ありません。
 ひさしぶりの更新は、ルバーブのコンポートであります。
 ふつうのスーパーではまだあまり見かけないが、ルバーブという植物がある。これが、見た目は軸の赤い蕗といった風情なのだが、煮るとまるで苺のようなフルーツの味、というじつに不可思議なもの。これについては『イギリスはおいしい』に縷述してあるので、ぜひ御一読願いたく・・・。
 さるほどに、このほどある方から、富士高原にて栽培されているルバーブをたくさん頂戴するという幸いを得た。さっそくこれに砂糖と赤ワインとシナモンと、若干の黒胡椒を加えて色も美しいコンポートを作った。なにぶん蕗の軸のようなものだから、切っているときはザクザクとしてなかなか繊維が強く、こわい感じのテクスチャーなのだが、これを煮るとあっという間にその繊維がほどけてフワフワになってしまうというところがまた、実に不思議である。それゆえ、あまり煮すぎるとすっかり形が崩れてしまうし、酸味が弱くなっておいしくない。あまり煮すぎないところで、ジューシーなコンポートにつくり、これを瓶詰めにして保存すると日もちもするし、実に美味しいものである。
 ルバーブは大黄という漢方薬の下剤の一種で、イギリスでも、もともとはそういう薬草として食べられていたものかと思うが、今はまったくフルーツのように愛好される。全体に爽やかな果実的酸味が豊かなのは、おそらくクエン酸やリンゴ酸を含むのであろうし、赤い皮は葡萄の皮などおなじようにポリフェノールを含有するものと想像される。ただ、苺などと違って、糖分は含まれないので、煮る時は、苺などよりも多めの砂糖を入れる必要がある。
 こうして美しくでき上がったルバーブのコンポートは、毎朝のトーストに、あるいはヨーグルトに添えて、または豚肉のソテーの薬味として、あるいはカレーを作るときのチャツネ代わりにと広く使える。煮え立っている熱々のをそのまま瓶にいれ、即座に固く蓋をして室温になるまで放置し、そのあと冷蔵庫で冷たくして保存すると長期にも保存できる(冷ましてから瓶詰めしては日もちしないので御注意)。