2015年12月19日土曜日

紀尾井町サロン・コンサート

12月16日の水曜日、午後七時開演。
 金沢から北山吉明ドクターを迎えて、『戦前前後・歌の教室』東京公演を開催、一夕を歌と笑いで楽しく過ごした。ピアノは五味こずえ君。
 曲目そのものは、ことし五月二十日に金沢アートホールで演奏した曲目を東京でも、ということで、そのプログラムに準拠したが、季節柄、最後の一曲は『夏は来ぬ』に代えて『クリスマス』(林 望作詩、伊藤康英作曲)を歌った。
 会場は、まだ新しい小ホール、紀尾井町サロンホール。客席数僅かに80席で、あっという間にチケットは完売となった。
 幸いに、お天気もよく、順調に満席となり、まさに和気あいあいたる空気のなかで、私たちも歌っていてとてもウキウキと楽しい気分を満喫し、聴衆のかたがたからも、まことに楽しかったというお褒めのお言葉を頂戴して、北山ドクターとともに喜んでいるところである。
 目玉曲として、こたび私が作詩し、千住明君が作曲した、慶應義塾横浜初等部の愛唱歌二曲を、初等部に教諭としてお勤めのピアニスト井谷佳代先生の特別出演をお願いして伴奏を弾いていただき、『この丘に』のほうは、二人で男声二部重唱で、『歩いてゆこう』は斉唱で、熱唱した。おかげさまで、これもとても評判がよく、CDとして出ているなら、ぜひ購入したいという人もあった。
 独唱は、北山ドクターは、『待ちぼうけ』『お菓子と娘』の二曲。前者のほうは、ユーモアたっぷりの所作入り熱演、後者は正統的なスタイルで歌われた。私は金沢と同じく、『落葉松』と『くちなし』。心を込めて語りかけるつもりで歌った。『くちなし』を歌っているときに、その歌詩「くちなしの実のように、待ちこがれつつ、ひたすらにこがれ生きよと、父は言う、いまもどこかで父は言う」というところまで来ると、どこかに亡き父の声が聞こえた思いがして、ふと胸にこみ上げるものがあった。そのため、一瞬声が揺れてしまったのは不思議な経験であった。ほんとうに、父の魂が会場まで聞きにきていたかもしれない。
 北山ドクターとのコンサートもこれが三回目。すでに来年の五月十八日には、また金沢で『花よりタンゴ』というタイトルのコンサートを開くことになっている。そこでは、ガルデルなどのタンゴに、私が新しい訳詩を書いた新作を初演する予定である。ぜひご来聴いただきたいと、庶幾うこと然り。

2015年12月10日木曜日

これはうまい!

食いしん坊の私としては、いつも気になっているのは、たとえばお寿司屋さんの賄いってものは、どんな具合になってるのだろう、ということである。そう思うのは私に限らないと見えて、なかには賄いで出していたのを、おいしいので表メニューにしたというような例も仄聞するところ。
 さて、そんな話を、私はいつもわが愛する早稲田の八幡鮨で談論風発していたところ、たとえば寿司ネタを取ったあとに残る鮪の血合などは、しばしば賄いの一品になるということを聞いた。ああ、それはうまそうな、と、根っからの食いしん坊根性が蠢動して、たべたい、たべたいと願っていたところ、
 「ちょうど今日仕入れて、新鮮な血合がでましたから」
 といって、おすそ分けに与った。いや、これはありがたい! さてこそ、感謝感激、もともとこの八幡の鮪はほんとうに素晴らしい一級品ばかりを仕入れてくることがわかっているので、血合だって一級品に決まってるのである。
 そこで、私はこれを持ち帰って、さっそく唐揚げに作ることにした。
 いや、非常に簡単なので、まず、清酒+みりん+減塩醤油を、そうさなあ、2:1:3くらいの割合に合わせ、そこへ、ほんとうにこれは思う存分、たっぷりの卸し生姜をドンといれて、そこへ一口に切った鮪の血合を漬け込むこと、約10分ほど。
 ここから先は、二通りのやり方がある。一つは、そのつけ汁もろともに小麦粉を加えて、比較的重い衣を付けて揚げるやりかた。これはたっぷりの油で揚なくてはならぬ。
 もう一つは、つけ汁から出してバットにでも並べた鮪に、小麦粉(または片栗粉)を打って、薄くまぶしてカリリっと揚げるやりかた。
 今回は、この打ち粉方式で、少量の油でシャロウフライにした。このほうが油の含浸量が少なく、ヘルシーであろうと考えたのだ。
 そして出来上がったのがこれ。色は黒いが、味はごく上品に淡い味である。しかし、醤油と生姜の香りが立っていて、血合の生臭さはほとんど皆無、じつにじつに美味掬すべきものがあった。八幡鮨に感謝!

2015年12月1日火曜日

柿コンポート



 ことしは、例年になく庭の柿が大なりをした。三〇〇個も生ったろうか、枝もたわわに、しかもひとつひとつの実も大きく、かつ甘く、おどろくほどの好成績であった。自分の家ではとうてい食べきれないので、何人かの知人にも配ったりしたが、それでもまだダンボールに一杯残った。このまま置いておけばやがて腐ってしまう。しかし、せっかく柿の木ががんばって恵んでくれた柿を、腐らせては申し訳あるまい。そこで、私はこれをコンポートにして瓶詰めとして保存することにした。
 柿だけでは酸味がないので味が薄い。そこで、おりしも到来していた紅玉りんごをプロセッサで粉砕して混ぜ、なおかつレモン汁と赤ワインもたっぷり加えて煮た。
 そうして熱々のところを瓶詰めにして密封したので、これで当分保存がきく。
 食べてみると、甘味、酸味、そしてちょっとコリコリっとした歯ごたえも楽しく、なんともいえない好風味となった。これを毎朝のトーストに乗せてたべているが、いっぽう、写真のようにヨーグルトを添えてみると、なかなかたのしいデザートにもなる。ぴりっとさせるために黒胡椒をひいてかけてあるが、これがまたデザートとしてはじつにおいしい。
 こんなおいしい甘柿を山のように恵んでくれた柿の木には、ことしはお礼肥えでもやらなくてはなるまいかと思っているところである。