2015年8月25日火曜日

自家製いちごジャム

八月の十日から十日間ばかり東京に戻り、猛暑と戦いながら、雑用をせっせと済ませ、また頼まれた講演なども終えて、ただちに信濃大町の家に戻ってきた。
 たった十日ほどの違いだったが、安曇野の早稲の田はもう黄色く色づきはじめていて、赤とんぼは飛び、ススキも出始めている。信州の冷涼な気候のなかでは、秋の訪れが早い。
 もう半袖半ズボンでは寒いので、秋の服装に変えたところである。
 ところで、この八月お盆前後になると、地元の農産物直売所にはいろいろと楽しいものが並ぶ。甘い甘いとうもろこしなどもその楽しみの一つだが、もう一つは、名残の小苺、とでもいうようなカワイイ小さな苺が、たくさん、それも驚くような廉価で売られるようになる。これを山のように買ってきて、いちごジャムを作るのもここでの楽しみである。
 洗ったり蔕をとったりする作業は大変だが、砂糖と赤ワインだけを入れてコトコトと煮る。途中アクをとることをこまめに、それで出来上がったのをガラス瓶に密封してすっかり冷えると、天然のペクチンが固まって、とてもおいしいジャムができる。
 ただいま、このジャムを毎朝たのしくトーストにのせて食べているところである。
 

2015年8月10日月曜日

僻村塾

きのう8月8日、白山市の白峰の奥にある、「僻村塾」というところまで講演にでかけた。これが、あっと驚くような山村僻陬の地で、僻村塾とは言い得て妙と感心をしたことである。現在は、池澤夏樹さんが塾長で、ひとつ気楽に話をしにきてくださいと頼まれ、『平家物語』についての講話と朗読をしてきた。こんな不便なところにも拘らず、熱心な聴衆が五十人くらいも集まって下さったろうか。終わってから、塾のフェロウがたのお手料理による、たいへんなご馳走が出た。ひとつひとつ、地元の食材を中心として、それはもう、じつにじつにじつにじつに美味極まるご馳走だった。料亭料理のようなものでなく、超絶的に洗練された家庭料理・郷土料理なのだが、そこにこそ、天下の美味は凝集しているのだ、とあらためて痛感するような素晴らしいお料理であった。なかでも、ほっそりとした若鮎を囲炉裏の炭火で焼いた焼き鮎のまあ、うまかったこと。骨などないような柔らかさ、しかし、しっかりと鮎の香味があって、ああ、ああ、思い出すさえ垂涎というものである。
 よい思い出を得て、きょう、酷暑のなかを信濃大町の山荘翠風居まで帰ってきたら、その涼しいことは、またなによりの妙薬であった。