2013年5月29日水曜日

いよいよ発売

さて、お待たせしております、『謹訳源氏物語』第十巻が、まもなく刊行になります。すでに再校まで済ませて、現在、印刷・製本の過程に入っており、店頭に並ぶのは、おそらく六月の七日前後になると思います。
2010年の三月に第一巻をリリースして以来、三年あまり、ついに第十巻が出て、これで長く苦しかった、そして楽しくもあった仕事が、いちおうの結末に至ると思うと、なんともいえぬ思いがします。
この三年間、おかげさまで、『謹訳源氏』の知名度も段々に浸透し、これから全巻完結後に購入を考えている図書館なども少なからぬことと思いますので、次第に皆さまのお目に触れる機会も多くなると思います。
このデザインは、私が自分で担当致しましたが、地色は漆塗りの深い朱色をイメージし、また天部に少しだけ各色を配したのは、袖口からこぼれる重ねの色という風情、そして全部の巻が揃うと十二単のような感じ、とそんなことを思ってこうしたデザインにしました。第一巻は若草色、第十巻は藤紫、とそのように初めから決めてありましたが、その余の巻々は、各種の色を試みながらデザイナーと協力しつつ決めていきました。帯と表紙下に「源氏香」の形をあしらって、なおタイトルの白文字は二度の重ね刷りという凝った印刷になっています。装訂そのものはコデックス装といい、往古日本に行われた綴葉装を学び、カバーを外すとあたかも和装本のように見えるようにしました。そうして背表紙のない分力学的に若干の弱みがありますので、それはカバーの料紙を非常に重い厚い紙を使用することで補強しています。しかし、パッと開いて戻らないというこの装訂は、特に書見台に置いて読むというときに絶大の威力を発揮します。
どうか皆さま、末長くご愛読のほど、心よりお願い申し上げます。