2015年7月22日水曜日

山林に隠棲中

次から次へと迫り来る締め切りやら、コンサートやら、講演やら、東京にいての仕事をやっと片付けて、信州の山荘にやってきている。
 東京が猛暑でも、こちらは28度くらいの快適な気候で、夜は20度かそこらの、まことにひんやりとした空気になる。
 冷房をかけずに楽々と眠れるのは、ほんとうに快適で、こういう環境にあっては、脳みその働きも百倍というものである。
 現在は、もっぱら『謹訳平家物語』の書き上げに専念中で、これをなんとか夏の終わりまでに仕上げてしまいたいと思うのだが、いざやってみると、仏教語、儒教語彙、和歌・漢詩文など、さまざまな引きごとなどに妨げられて、そうスイスイとも書き進め得ない。
 しかしながら、着実に一歩ずつ進めていくならば、やがて終わりも見えてくるであろう。源氏物語のような解釈上の困難さは、平家物語には存在しない。ただ、原典が持っている語り芸としての生き生きとした語り口を、どうやって現代語に活かすか、すなわち、いかに語り物らしい文体(私は仮にこれを「講釈体」と名づけている)で訳すか、鍵はそこにかかっている。