2017年9月9日土曜日
国文学研究資料館講演
昨日、9月8日は、立川の国文学研究資料館にて、『古文眞寶』についての研究会が催され、今回はとくに武蔵野美術大学の先生がた、大学院生、学部学生の皆さんが大勢参加されての、共同研究集会というふうな催しであった。『古文眞寶』は、私どもは漢文学における日本でもっとも普及したアンソロジーとして研究するのであるが、武蔵野美術大学のほうでは、これを文字デザインの史的研究の対象として格好のものと捉えられる。そこで、文学とデザインと、双方から歩み寄って、お互いの知見を突き合わせ、また対話をすることによって、新知見を得ようという試みである。武蔵野美術大学の皆さんは、非常な熱を以て、これに参加され、国文学研究資料館サイドからは、同館教授神作研一君と私とがその文献としての価値などについて講演した。私としては、『古文眞寶』の受容の側面と、それから文字や版面デザインの側面の両面に亙って知るところ考えるところをお話しし、またPowerPointを用いて、江戸時代における版本の歴史や、その字体などの実際についてご覧いただいた。なかなか面白い議論が交わされた、たのしい研究会であった。
2017年8月31日木曜日
秋景色
大町滞在も終りに近づいてきた。
『謹訳源氏物語』文庫版の改訂・校閲作業に追われいるうちに、いつのまにか信濃は秋そのもの、昨日も、この近在のさる手打ちそば店を探索しに出掛けてみたら、もう写真のように稲穂は重く稔って、まもなく刈り入れも始まるかという感じになっていた。
ことしは天気が悪くて、毎日雨ばかり降った夏で、それは信濃も同じことであったけれど、幸いに稲の成育はそれほど悪影響を受けなかったらしい。
ただ、こうなってから台風の嵐などに際会すると被害が出るので、まずは安穏なる秋の訪れと無事の収穫を祈るばかり。
いま安曇野では、林檎がだいぶ色づいてきて、まもなく収穫も始まるであろう。
また休耕田は多く蕎麦畑に転作されていて、そこここに真っ白な蕎麦の花も可憐に揺れている。ススキも穂が出て秋風に揺れている。
きょうなどは、台風15号の影響で、一気にシベリアから寒気が流れ込み、わが山荘翠風居のあたりは、ずいぶん寒くなった。あわてて夜はホットカーペットなどオンにして足下を温めることにした。そうしないと、体が冷えて喘息がひどくなるからである。
ことしの夏もとうとう逝ってしまった。
この季節がいちばんさびしい。
2017年8月12日土曜日
翠風居にて
豊橋での演奏会を終えてすぐ、私は酷暑の東京を脱出して、例年のとおり、信州信濃大町の山荘『翠風居』に腰を据えた。
なんとしても終えなくてはならない仕事は、『謹訳源氏物語』文庫版の修訂と校正である。まあ、もう一度読み直しという仕事で、明けても暮れても再び源氏と対峙する日々であるが、なにしろこちらは冷涼な気候で、一切冷房というものが必要ないのは、体と心の安寧のためにはなによりの環境である。
ほんとうは欲張って『謹訳徒然草』の執筆にも手を染めようと思っていたのだが、七月以来の体の不調がたたって、なかなかそこまでの余裕がない。
この不調は、その後、当地の呼吸器の専門医に受診した結果、喘息であるということが確定診断となったので、いまはもっぱらその治療にいそしみながら、やっと仕事も乗ってきたというところである。さるにても、私の喘息はもう若いころからの宿痾だから、これとうまく折り合いを付けながら、しかし最善を尽して仕事をするためには、冷房などの必要なところに居てはやはり問題が多い。冷房の空気を吸うだけで、喘息の発作が誘発されるからである。おかげさまで、やっと声も元に戻り、いまは仕事の傍ら、また全力歌唱を試みることができるようになった。ありがたいことである。
2017年8月3日木曜日
ドットラーレ豊橋公演
昨日、八月二日は、豊橋の西村能舞台を会場として、また北山ドクターと二人、デュオ・ドットラーレの豊橋公演をやってきた。
今回は、ピアノ伴奏を井谷佳代先生にお願いして初めての機会であったが、先生の温雅で流麗なピアノに乗せて、大いに歌ってきたところである。
ただ、北山ドクターは、いつもながらの朗々たる美声で大向こうを唸らせていたものの、私自身は、二週間ほど前から突然に気管支喘息のような症状に襲われて、練習もままならず、ただひたすら本番の時に声が出るようにと必死の養生を続けていたのであった。まあなんとかそれでも途中で落ちてしまうことなく、所定の曲数をすべて歌い終えたというところである。思うように声が出なかったのは遺憾の極みではあるが、なにぶんとも生身の体が楽器ゆえ、こういうことは避け難いところがある。そんななかでも、最善を尽して歌ってきたつもりではある。
今回も『母の教へ給ひし歌』という題名で、昨冬に金沢で演奏したプログラムに準拠して歌ったが、一部曲目を変更した。
会場の西村能舞台というのは、豊橋駅からほどちかい住宅地にあって、北山ドクターの従姉さんに当る方がオーナーの個人邸宅内の能舞台で、いまは能舞台としては使用せず、舞台の中央にグランドピアノが鎮座して西洋音楽のための小ホールとして使われている由。ご縁を以て演奏させていただけたのは、まことに楽しい、よい経験であった。
2017年8月1日火曜日
揚げ豚皮
この夏、一家揃って婿殿のアメリカ(ヴァージニア)の実家に里帰りしていた娘夫婦と孫どもが、元気に無事帰ってきた。
みんなアメリカの広大な自然のなかでのびのびと夏休みを過ごしたと見えて、一回り大きくなって戻った。なによりのことである。
さて、ここもとお目にかけるものは、その娘達からのお土産として貰った、アメリカン・スナックである。なんでも、日本には無い珍しいものをと思って選んだそうだが、なるほどこれは珍しい。豚の皮を油で揚げたもので、こういうものは、イギリスにもあるが、イギリスのはほんとうにただ揚げただけで味が付けてないのに対して、アメリカのはいろいろとフレーバーが着けてあるところが、これまたアメリカらしい。で、その一つはバーベキュー味、もう一つはソルト&ヴィネガー味とある。
さっそく食べてみたが、これはもともとが豚の皮なので、全体に非常に濃厚にオイリーであって、かなり重い。胃弱の私どもには、なかなか食べ切れない味わいのものであった。ソルト&ヴィネガーは、Walker のpotato crisps(日本流に言えばポテトチップ)でお馴染の味だが、相手が豚の皮となるとだいぶ様子が違う。まあ、たとえばビールなど飲む人が、そのつまみにするというような具合式の食べ物かと思うが、お茶では重すぎてちょっと持て余す感じではある。しかし、アメリカ人は、こんな油っこいものをどんどん食べるので、そりゃ太るわけですなあ。
2017年7月20日木曜日
バター不使用のショートブレッド
かねて、ショートブレッドというお菓子は、私の愛好すること深きものであるが、それが美味しいけれど、めったやたらとカロリーが高いという欠点がある。なにしろ、組成からして、全体の三分の一はバター、六分の一は砂糖、というのだからしかたない。美味しいものは体に悪い、そこをどうクリヤーするか、私はまた灰色の脳細胞を運転することしばし、ついによいことを思いついた。
バターに代えて、オメガ3脂肪酸に富むココナツオイルを使ったらどうか。また小麦粉に三分の一くらいきな粉を交えたらどうか、この二つのアイデアを、さっそく実行してみたところ、見事に成功したので、ここもとご報告する次第である。
ショートブレッドの製法・材料については、拙著『ホルムヘッドの謎』に詳しく出ているのでごらんいただきたい。その材料の小麦粉300gのところを、小麦粉200g+きな粉100gに変更し、バター200gに代えて純良なココナツオイル200gとする。あとはほぼ作り方は同じだが、ココナツオイルには塩が含まれていないので、かならず塩を一つまみ加えていただきたい。さらに、ココナツオイルの香りが強すぎるといけないので、シナモンを若干加えてみた。
焼き時間は、今回は生地の厚みを7ミリくらいで作ったので、180度で十五分とした。こうしてじっくりと焼き上げた結果、これはまた見事にショートブレッドが完成。食べてみると、さくさくしてなんともいえぬ美味、これでバターなしとはとうてい思えない。ココナツオイルの香りもちょうといい程度に感じられ、シナモンとよいバランスとなった。これならいくらでもたべられる。きな粉でカリウムやイソフラボンなども取れるし、これは健康志向のショートブレッド、どこかのお菓子屋さんが作って売り出してくれるとよろしいのだが。
2017年7月19日水曜日
ルバーブ
まことにまたご無沙汰で申訳ありません。
ひさしぶりの更新は、ルバーブのコンポートであります。
ふつうのスーパーではまだあまり見かけないが、ルバーブという植物がある。これが、見た目は軸の赤い蕗といった風情なのだが、煮るとまるで苺のようなフルーツの味、というじつに不可思議なもの。これについては『イギリスはおいしい』に縷述してあるので、ぜひ御一読願いたく・・・。
さるほどに、このほどある方から、富士高原にて栽培されているルバーブをたくさん頂戴するという幸いを得た。さっそくこれに砂糖と赤ワインとシナモンと、若干の黒胡椒を加えて色も美しいコンポートを作った。なにぶん蕗の軸のようなものだから、切っているときはザクザクとしてなかなか繊維が強く、こわい感じのテクスチャーなのだが、これを煮るとあっという間にその繊維がほどけてフワフワになってしまうというところがまた、実に不思議である。それゆえ、あまり煮すぎるとすっかり形が崩れてしまうし、酸味が弱くなっておいしくない。あまり煮すぎないところで、ジューシーなコンポートにつくり、これを瓶詰めにして保存すると日もちもするし、実に美味しいものである。
ルバーブは大黄という漢方薬の下剤の一種で、イギリスでも、もともとはそういう薬草として食べられていたものかと思うが、今はまったくフルーツのように愛好される。全体に爽やかな果実的酸味が豊かなのは、おそらくクエン酸やリンゴ酸を含むのであろうし、赤い皮は葡萄の皮などおなじようにポリフェノールを含有するものと想像される。ただ、苺などと違って、糖分は含まれないので、煮る時は、苺などよりも多めの砂糖を入れる必要がある。
こうして美しくでき上がったルバーブのコンポートは、毎朝のトーストに、あるいはヨーグルトに添えて、または豚肉のソテーの薬味として、あるいはカレーを作るときのチャツネ代わりにと広く使える。煮え立っている熱々のをそのまま瓶にいれ、即座に固く蓋をして室温になるまで放置し、そのあと冷蔵庫で冷たくして保存すると長期にも保存できる(冷ましてから瓶詰めしては日もちしないので御注意)。
ひさしぶりの更新は、ルバーブのコンポートであります。
ふつうのスーパーではまだあまり見かけないが、ルバーブという植物がある。これが、見た目は軸の赤い蕗といった風情なのだが、煮るとまるで苺のようなフルーツの味、というじつに不可思議なもの。これについては『イギリスはおいしい』に縷述してあるので、ぜひ御一読願いたく・・・。
さるほどに、このほどある方から、富士高原にて栽培されているルバーブをたくさん頂戴するという幸いを得た。さっそくこれに砂糖と赤ワインとシナモンと、若干の黒胡椒を加えて色も美しいコンポートを作った。なにぶん蕗の軸のようなものだから、切っているときはザクザクとしてなかなか繊維が強く、こわい感じのテクスチャーなのだが、これを煮るとあっという間にその繊維がほどけてフワフワになってしまうというところがまた、実に不思議である。それゆえ、あまり煮すぎるとすっかり形が崩れてしまうし、酸味が弱くなっておいしくない。あまり煮すぎないところで、ジューシーなコンポートにつくり、これを瓶詰めにして保存すると日もちもするし、実に美味しいものである。
ルバーブは大黄という漢方薬の下剤の一種で、イギリスでも、もともとはそういう薬草として食べられていたものかと思うが、今はまったくフルーツのように愛好される。全体に爽やかな果実的酸味が豊かなのは、おそらくクエン酸やリンゴ酸を含むのであろうし、赤い皮は葡萄の皮などおなじようにポリフェノールを含有するものと想像される。ただ、苺などと違って、糖分は含まれないので、煮る時は、苺などよりも多めの砂糖を入れる必要がある。
こうして美しくでき上がったルバーブのコンポートは、毎朝のトーストに、あるいはヨーグルトに添えて、または豚肉のソテーの薬味として、あるいはカレーを作るときのチャツネ代わりにと広く使える。煮え立っている熱々のをそのまま瓶にいれ、即座に固く蓋をして室温になるまで放置し、そのあと冷蔵庫で冷たくして保存すると長期にも保存できる(冷ましてから瓶詰めしては日もちしないので御注意)。
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