2013年10月1日火曜日

野の秋

まことに長々のご無沙汰にて、申し訳ありませんでした。八月の末に『謹訳源氏物語』の完成祝賀会を東京会館で開催し、そのご報告をここに出すつもりでいたところが、猛烈ないそがしさのために取り紛れ、ついに時宜を逸してしまいました。
祝賀会は、観世流お家元観世清和師の仕舞『源氏供養』ならびに祝言付謡「四海波」に始まり、鹿島茂さん、千住博さん、三浦しをんさん、そして元新潮社の名編集者として名高い柴田光滋さん、また平凡社の名編集者であって『イギリスはおいしい』の生みの親であった山口稔喜さん、声楽家の嶺貞子さん、国文学者の長谷川政春さんと、各界からのご祝辞をいただき、また、テノールの勝又晃さんと、ソプラノの鵜木絵里さんに、ヴェルディのトラヴィアータから、有名な乾杯の歌を歌ってきただきました。乾杯の音頭は俳人の西村和子さんが取ってくださいました。まことに和気あいあいたる、そして中身の濃いお話ばかりの、楽しいひとときでありました。最後には私もつい調子にのって、勝又君と二人で、自作の訳詩による『アロハオエ』のデュエットまで披露してしまうという、破天荒なる祝賀会となりましたが、皆さん楽しんでくださったようです。
さて、その後はまた、原稿書き、次の本『イギリスからの手紙』の原稿整斉、さらに立て続く講演と席の温まる暇のない毎日を送っています。
さるなか、北九州の苅田町へ、恒例の講演をしにいってきました。
同町の市民カレッジの名誉学長を仰せつかっている関係で、毎年秋に講演をしにいきます。ことしは『謹訳源氏物語を書き終えて』と題して、源氏の話をしてきました。
翌日は、一日空き時間を作って、苅田町から行橋市にかけて、海沿いの田園を逍遥してきました。沓尾漁港、八津田、浜の宮、そして豊前松江、宇島のあたりをと往きこう行きして、美しい田園の景色をたのしんできたのでした。
掲出の写真は、その八津田のあたりの無名の野の景色です。これぞ日本の秋、というすすき野の景色は心和むものがあります。さすがに、このあたりはあの嫌らしいセイタカアワダチソウも見当たらず、すすきと彼岸花が盛りの色を見せていました。ああ、日本の秋は美しいなあ。どうぞ、写真をクリックし、拡大してご覧ください。