2015年8月10日月曜日

僻村塾

きのう8月8日、白山市の白峰の奥にある、「僻村塾」というところまで講演にでかけた。これが、あっと驚くような山村僻陬の地で、僻村塾とは言い得て妙と感心をしたことである。現在は、池澤夏樹さんが塾長で、ひとつ気楽に話をしにきてくださいと頼まれ、『平家物語』についての講話と朗読をしてきた。こんな不便なところにも拘らず、熱心な聴衆が五十人くらいも集まって下さったろうか。終わってから、塾のフェロウがたのお手料理による、たいへんなご馳走が出た。ひとつひとつ、地元の食材を中心として、それはもう、じつにじつにじつにじつに美味極まるご馳走だった。料亭料理のようなものでなく、超絶的に洗練された家庭料理・郷土料理なのだが、そこにこそ、天下の美味は凝集しているのだ、とあらためて痛感するような素晴らしいお料理であった。なかでも、ほっそりとした若鮎を囲炉裏の炭火で焼いた焼き鮎のまあ、うまかったこと。骨などないような柔らかさ、しかし、しっかりと鮎の香味があって、ああ、ああ、思い出すさえ垂涎というものである。
 よい思い出を得て、きょう、酷暑のなかを信濃大町の山荘翠風居まで帰ってきたら、その涼しいことは、またなによりの妙薬であった。