2019年10月28日月曜日

湯島の聖堂


 昨日の日曜日、10月27日の午後、湯島の聖堂へ講演に出向いた。湯島の聖堂は、いわゆる昌平坂学問所(昌平黌)であるが、現存の建物は、関東大震災後に鉄筋コンクリートで再建されたもので、昔の建物が残っているわけではない。
 しかし、周囲をぐるりと回る石垣などは、きっと往古のままに違いない。
 ここには、斯文会という組織があって、研究や広報活動を担っているが、きのうはその斯文会の招きで話に出掛けたのである。

 『私の師事した二人の儒者 ーー福島正義先生と阿部隆一先生』
 
 という話をしてきた。福島先生は私の高校時代の恩師で、漢文だけを教えておられた。
 熱血漢の快男児で、剣道の達人でもあり、稚気愛すべき国粋壮士でもあり、漢詩人でもあった。その先生に高校一年のときに漢文をお教え頂いたことは、私のその後の研究行路にそこばくの影響があったと思う。阿部隆一先生は、大学院以後、書誌学を一から仕込んでいただいた恩師であるが、おっかない、けれどもこれまた愛すべき先生であった。
 その阿部先生は昭和58年の一月に易簀され、同じ年の十月に福島先生は『日本上代文学と老荘思想』という大著を世に出された。が、福島先生がいつ亡くなられたのかは、いろいろ調べてみても分からなかった。福島先生のことは、私の自伝的小説『帰らぬ日遠い昔』に詳しく書いてある。ご一読下さるとありがたい。